可逆性脳血管攣縮症候群

可逆性脳血管攣縮症候群の症状と原因について説明します。

 

Q1. 可逆性脳血管攣縮症候群の症状は?

A. 可逆性脳血管攣縮症候群は、雷鳴頭痛と表現される「頭の中で突然雷が鳴ったような激しい頭痛」で発症します。

可逆性脳血管攣縮症候群

後頭部を中心とした頭部全体の強い痛みの事が多く、脈打つ場合もあれば強く圧迫される感じの場合もあります。また、痛みの場所が移動する事もあります。

入浴やシャワー水泳ダイビング排便、興奮、性交、筋トレ、大声、笑い、泣き、咳やくしゃみ、ストレス、感染、女性ホルモンの変化、セロトニン作動薬や免疫抑制剤などの薬物が引き金となって発症します。

20-50歳の女性に多く、片頭痛と同様の閃輝暗点や言葉が出にくい、手足のしびれや力が入らないなどの症状が出る場合もあります。一時的に記憶が途切れる一過性全健忘との関連も議論されています。

交感神経系の過剰反応が要因の1つとされています。このため、普段高血圧症でなかった方でも血圧が上がる事があります。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を合併する事もありますが、多くは無症状か軽い症状です。しかし、まれに片麻痺などの後遺症を残す場合もあるため、早期に診断する必要があります。

当院では、これまで可逆性脳血管攣縮症候群について、具体的症例を紹介してきました。

 

Q2. 可逆性脳血管攣縮症候群の診断は?

A. MRA検査が役立ちます。脳血管を撮像すると、

可逆性脳血管攣縮症候群

このように至る所で脳血管がくびれて見える所見が特徴です。片頭痛ではこのような脳血管の変化は見られません。

 

Q3. 片頭痛との関連は?

 A. 当院を受診した可逆性脳血管攣縮症候群の87.0%が、元々片頭痛のある方です。

国際頭痛分類第3版では、「6.7.3.3 可逆性脳血管攣縮症候群の既往による持続性頭痛」として分類されています。これは慢性片頭痛に移行したものと考えられます。Yu-Hsiangらの論文1)でも、発症後に約半数の患者が片頭痛をきたすようになったと述べています。

 

 

Jérômeらのレビュー2) では、可逆性脳血管攣縮症候群と片頭痛とは、脳血管壁の変化を起こす共通要因が存在すると推測しています。

可逆性脳血管攣縮症候群

 

片頭痛では、脳の血管が収縮した後に拡張して痛みを起こします。可逆性脳血管攣縮症候群はこの収縮現象が過剰になった状態とも考えられます。

当院では、可逆性脳血管攣縮症候群は片頭痛から移行した状態と認識しています。つまり、様々な病態を生じる片頭痛症候群の一局面を見ているものと推測します。

 

Q4. 可逆性脳血管攣縮症候群の治療と経過は?

A. 上記の推論に基づき、当院では片頭痛の予防薬を治療に用いています。(バルプロ酸、カルシウム拮抗薬、交感神経遮断薬)

通常、頭痛は3週間以内に軽くなり、3ヶ月以内に脳血管の変化は元に戻るとされています。しかし、その間強い頭痛で日常生活が妨げられるため、当院では積極的に治療を進めています。

 

Q5. 自分でできる対策法は?

A. 可逆性脳血管攣縮症候群は、交感神経系の過剰反応がきっかけで発症する事があります。したがって、ストレスを避け副交感神経系を優位にさせる事が予防につながります。リラックスした生活習慣を心掛ける事が大事です。

また、片頭痛と間違えられやすく、たびたび誤診される事もあります。そこで、今までなかったような頭痛の場合には、早めに受診するようお勧めします。

横浜脳神経内科では、日本頭痛学会専門医・指導医が診療を担当しています。

 

引用文献

 

(文責:理事長 丹羽 直樹

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