片頭痛の仕組み

片頭痛では、主に2つのメカニズムが関係しています。

①脳の血管が拡張するための痛み

脳の血管が拡張するための痛み

様々なきっかけ(ストレス、月経、薬など)で
(図左)血液の血小板という成分から「セロトニン」という物質が出てきて、
(図中)まず最初に脳の血管が縮みます。
(図右)その後反動で血管が拡がりズキンズキンと痛みます。

片頭痛で血管が拡張している時に頭を下げると、頭に血液が流れ込んでさらに血管が拡がるため、痛みが強くなります。運動や飲酒でも血管が拡がるため、やはり痛みは強くなります。ズキンズキンと脈に合わせて痛くなるといわれていますが、血管が伸びきってしまうと脈は消えるので、脈打たない場合もあります。
また、拡がる血管はいつも片側とは限らず、両側の場合もあります。

拡がっている血管を縮めて元に戻せば、血管の痛みは取れるという事になります。そのために、セロトニンと同様の作用をする「トリプタン製剤」という薬が用いられます。
また、あらかじめ血管を縮ませないようにすれば、その後の血管拡張を防げる可能性があります。そこで、あらかじめ血管をゆるませておく「カルシウム拮抗薬」が予防薬として用いられます。

②脳の過敏状態が痛みをさらに悪化

血管が拡がるだけの痛みではありません。もう1つのしくみがあります。
血管の壁には痛みを伝える「三叉神経」が分布していて、痛みの信号が脳の中心にある「三叉神経核」まで伝わります。

この「三叉神経核」を中心として脳細胞が興奮して敏感になった状態が同時に起きており、伝わってきた痛みの信号をさらに強めてしまうのです。
したがって、血管を縮めるだけで痛みが治まらなければ、この過敏状態を弱めてやる必要があります。そのために「抗てんかん薬」、「抗うつ薬」、「β遮断薬」などが予防薬として用いられています。

こうした2つのメカニズムがどうして起こるのかは、まだ完全には解明されていませんが、脳に痛みを伝達する三叉神経から放出されるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が関係している事が分かってきています。

当頭痛外来では、

  1. ①脳血管の変化
  2. ②脳細胞の興奮状態

という2つの原因のどちらが主体になっているかを考えて治療を考えます。それは患者さん一人ひとり異なり、同じ一人の患者さんでも時期や環境により変化します。ある時期効いていた薬が効かなくなったりするのはこのためです。

文献

  1. 臨床神経 2020;60:668-676

(文責:理事長 丹羽 直樹

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