1週間続いた頭痛の正体

頭痛が1週間以上も続くと、生活に支障をきたします。

症例

40代前半の女性の症例です。
20代の頃から片頭痛があり、市販の鎮痛剤やトリプタンという薬でしのいでいました。
ある日の朝、トイレに行き排便後、後頭部の激しい頭痛が出現。その後多少軽くなったものの、翌朝もまだ痛みは続いていました。トイレでいきむと、再び強い頭痛が襲ってきました。後頭部だけでなく頭全体がズキンズキンと脈打つように痛くなり、めまいや吐き気も伴いました。
片頭痛と思い、処方されていたトリプタンを飲んでも効かない状態で、しばらくしてもう1回トリプタンを飲んだところ、かえって痛みが強くなってしまいました。

その後も断続的に頭痛は続き、1週間が経ちました。今まで片頭痛の時には、せいぜい3日以内に治まっていたのですが、これ程長く続く頭痛は今までにはなかったとの事で、発症から7日目に横浜脳神経内科を受診しました。

MRA(MRIを使った脳血管の撮像)を見ると、

RCVS第7病日

椎骨動脈(首の後ろから脳へ行く血管)や脳底動脈(脳の中心部から後頭部へ行く血管)に、くびれて細くなった部分(青矢印)ができています。

可逆性脳血管攣縮(れんしゅく)症候群
(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome: RCVS)
という状態です。
血管攣縮というのは、血管がけいれんして縮んでしまう状態で、片頭痛の治療薬トリプタンではさらに血管を縮めてしまう事になり、全く効果はありません。かえって頭痛が悪化する場合もあります。可逆性脳血管攣縮症候群では、逆に血管を拡張する薬で治療します。痛みを脳に伝える三叉神経や血管を緊張させる交感神経が過敏な状態でもあり、これらを抑える薬を治療に加える事があります。当院では、片頭痛の予防にも使われる抗てんかん薬(バルプロ酸)やβ遮断薬(プロプラノロール)を必要に応じて同時に用いています。

国際頭痛分類第3版では、「6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」と分類されており、病態はまだ充分には解明されておらず、雷鳴頭痛として発症すると記載されています。
画像所見として、動脈の収縮と拡張が交互に存在する「数珠状(string of beads)またはソーセージをつなげたような(sausage on a string)外観」が特徴とされています。

入浴やシャワーがきっかけで発症する入浴関連頭痛であったり、排便などいきむ事筋トレなど息を止めて力を入れる動作で発症する事があります。

入浴関連頭痛については、2000年に根来らにより発表1) され、その後2008年にWangらによって21例が報告2) されました。その後の多くの論文の中で、フランスのDucros Aらの報告3) と台湾からのChen SPらの報告4) が際立っています。

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)は、通常1-3ヶ月位で自然に回復してきますが、少しでも早くに正しく診断し、痛みを取る治療を行う事が大事です。

文献

  1. K Negoro, M Morimatsu, N Ikuta, H Nogaki. Benign Hot Bath‐Related Headache.2000;40:173-175.
  2. S-J Wang, J-L Fuh, Z-A Wu, S-P Chen, J-F Lirng. Bath-Related Thunderclap Headache: A Study of 21 Consecutive Patients. Cephalalgia 2008;23:854-859.
  3. Ducros A. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Lancet Neurol 2012;11:906-917.
  4. Shih-Pin Chen, Jong-Ling Fuh, Shuu-Jiun Wang. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Expert Rev Neurother. 2011 Sep;11(9):1265-76.

(文責:理事長 丹羽 直樹 ・ 副院長 木島 千景

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