頭痛が1週間以上続く原因について説明します。
頭痛が1週間以上続く症例1
40代前半の女性です。
20代の頃から片頭痛があり、市販の鎮痛剤やトリプタンでしのいでいました。
朝トイレに行き排便後、後頭部の激しい頭痛が出現。翌朝軽くなったものの、まだ痛みは続いていました。さらに、後頭部だけでなく頭全体がズキンズキンと脈打つように痛くなりました。
片頭痛と思い、トリプタンを飲んでも効かない状態でした。
そして、その後も頭痛は続き8日が経ちました。今まで片頭痛の時は3日以内に治まっており、これ程長く続く頭痛は今までありませんでした。頭痛が1週間以上続く原因は何だろうと思い、横浜脳神経内科を受診しました。
MRA(MRIを使った脳血管の撮像)では、
脳の血管にくびれて細くなった部分ができています。
可逆性脳血管攣縮(れんしゅく)症候群
この所見から、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。血管がけいれんして縮む状態であり、トリプタンではさらに血管を縮めてしまい、全く効果はなく悪化する場合もあります。したがって、可逆性脳血管攣縮症候群では、血管を拡張する薬で治療します。また、痛みを脳に伝える三叉神経や交感神経が過敏な状態でもあり、これらを抑える薬を治療に加える事があります。当院では、片頭痛の予防にも使われる抗てんかん薬(バルプロ酸)やβ遮断薬(プロプラノロール)を必要に応じて同時に用いています。
可逆性脳血管攣縮症候群による頭痛が1週間以上続く原因となる場合は多いです。そして、通常1-3ヶ月位で自然に回復してきます。しかし、少しでも早くに正しく診断し、痛みを取る治療を行う事が大事です。
頭痛が1週間以上続く症例2
20代後半の女性で、10代の頃から片頭痛がありました。20代前半に就職し、たまに頭痛はありましたが、部署が変わりPCの画面を見て仕事をする事が増え、残業も多くなりました。この頃から頭痛が増え、ほぼ毎日のように頭痛が起こるようになりました。
業務や日常生活に支障をきたすようになったため、当院を受診しました。
頭部MRI検査では異常はなく、頭痛が多くなってから約4ヶ月間に及ぶ事から、慢性片頭痛と診断しました。長時間のPC作業と疲労やストレスがきっかけになったと考えられます。
慢性片頭痛
月に15回以上の頭痛で3ヶ月を超えて起こる状態と定義されています。
可逆性脳血管攣縮症候群のような重度の頭痛でなくても、1週間以上続く場合は日常生活の支障度が高いと思われます。
患者さんへのアドバイス
可逆性脳血管攣縮症候群
この疾患は、排尿・排便、いきむ動作などが発症の誘因となります。適度の運動や食生活の改善により、便秘を予防する事が大切です。マグネシウムを含む食事が、便秘の予防だけでなく、片頭痛の予防にもなります。
片頭痛の食事療法をご参照ください。
慢性片頭痛
片頭痛が慢性化している原因を考察してみてください。どういう時に頭痛を生じるか?逆にどういう時に頭痛が楽になるか?PCやスマートフォンを見過ぎていないか?睡眠は充分にとれているか?などをチェックしてみましょう。
文献
- K Negoro, M Morimatsu, N Ikuta, H Nogaki. Benign Hot Bath‐Related Headache.2000;40:173-175.
- S-J Wang, J-L Fuh, Z-A Wu, S-P Chen, J-F Lirng. Bath-Related Thunderclap Headache: A Study of 21 Consecutive Patients. Cephalalgia 2008;23:854-859.
- Ducros A. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Lancet Neurol 2012;11:906-917.
- Shih-Pin Chen, Jong-Ling Fuh, Shuu-Jiun Wang. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Expert Rev Neurother. 2011 Sep;11(9):1265-76.
(文責:理事長 丹羽 直樹)