マスク頭痛について説明します。

マスク頭痛の主な原因
1. 酸素不足と二酸化炭素の蓄積
マスクを着用すると、外気との交換が制限され、以下の状況が発生します。
- ・マスク内では通常の空気と比べて酸素が約9割に減少し、二酸化炭素が約30倍に増加します。
- ・脳が充分な酸素を得られなくなると、多くの酸素を運ぼうとして脳血管が拡張します。
- ・さらに、二酸化炭素は脳血管を拡張させる作用があり、脳血管が拡張します。
これが片頭痛の原因となります。また、密着性の高いマスクほど、この問題が顕著になります。
2. マスク内の温度上昇
マスクを着用すると熱がこもりやすくなり、内部の温度は37-38度近くまで上昇する事があります。血管は温度が上がると拡張する特性があります。つまり、脳血管拡張が片頭痛を誘発します。特に暑い季節や運動時には、マスク内が「サウナ状態」となり、この問題が悪化します。
3. 耳や首への物理的な負担
耳の周辺には、後頭神経や三叉神経など痛みに関係する神経が集中しています。したがって、長時間のマスク着用がこれらの神経を刺激して、頭痛の原因になる事もあります。
マスク頭痛になりやすい人の特徴
以下の条件に当てはまる方は、特に、マスク頭痛を起こしやすい傾向があります
- ・元々片頭痛の既往がある方。
- ・長時間暑い環境で過ごす方。
- ・外気を遮断する性能の良いマスクを使用している方。
- ・マスク着用時に多く会話をする方や運動をする方。
マスク頭痛の対策と予防法
- ・人との距離が確保できる場所では一時的にマスクを外して換気する。
- ・通気性の良いマスクを選ぶ。
- ・マスクの紐が耳に負担をかけないものを選ぶ。
マスク頭痛が起きた時の対処法
- ・頭痛のある側の頸部を冷やす。(血管の収縮を促す)
- ・手や足のツボ押しが有効な事もある。
- ・水分と適度な塩分を摂取する。(脱水も頭痛の原因になる事がある)
- ・アルコールの摂取は控える。(血管拡張を促進する)
注意が必要なケース
以下の症状がある場合、他の疾患の可能性も考えられます。したがって、頭痛専門医に相談するようお勧めします。
- ・頭痛が長期間続く場合。
- ・頭痛薬を服用しても症状が改善しない場合。
- ・吐き気や嘔吐、めまいなどがある場合。
- ・いつもと異なる激しい頭痛の場合。
横浜脳神経内科は、日本頭痛学会、日本神経学会の認定施設です。緊急な状態かどうかが心配な方は、ためらわず受診してください。
引用文献
- 1) 目々澤 肇, コロナ禍の頭痛診療:医師会データと自院情報の検討, 日本頭痛学会誌, 48 : 503-505, 2022.
- 2) Miguel A. Collado-Ortiz, Emilio Arch-Tirado, Nadia A. Gandarilla-Martínez, Face mask and protective eyewear-associated headache among healthcare workers during the COVID-19 pandemic, Cir Cir . 2022;90(6):749-758.
- 3) Sevcan İpek, Sadık Yurttutan, Ufuk Utku Güllü, Tahir Dalkıran, Can Acıpayam, Adem Doğaner, Is N95 face mask linked to dizziness and headache?, Int Arch Occup Environ Health. 2021 Mar 1;94(7):1627–1636.
(文責:横浜脳神経内科 理事長 丹羽 直樹)