夜中や明け方に頭痛で目が覚める原因には、いくつかの可能性が考えられます。
可逆性脳血管攣縮症候群
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS: Reversible Cerebral Vosoconstriction Syndrome)とは、雷鳴頭痛と表現される「急に頭の中で雷が鳴ったかのような激しい頭痛」で発症する事がほとんどで、吐き気を伴う事もあります。突然「今までにないような強い頭痛」で発症した後、断続的に痛みが続くようになります。
頭部MRA検査(MRIを用いた血管撮影)を撮ると、
このように脳の血管が所々で収縮して細くなっている状態が観察されます。まれに脳梗塞やくも膜下出血を合併する事があります。
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の発症には、何らかのトリガーとなる誘発要因があります。
- ・入浴やシャワー
- ・排便
- ・性交
- ・咳やくしゃみ
- ・潜水やダイビング
- ・興奮や大声
- ・息を止めて力を入れる動作
- ・精神的ストレス
- ・血管作働性薬物
- ・急性副鼻腔炎のような頭蓋内の炎症
- ・女性ホルモンの変化
こうしたトリガーはっきりしない場合も約30%存在します。
あまりの痛みに、夜間眠っていても目が覚めてしまうという方が多いです。最初の誘発要因が加わる度に頭痛は強くなり、上に示したそれ以外の要因が加わっても悪化します。
群発頭痛
群発頭痛も夜眠った後や明け方に、あまりの激痛で目が覚めてしまう傾向があります。
群発頭痛の特徴は、
- ・左右いずれかの目の奥のえぐられるような強い痛み
- ・痛みと同じ側の目の充血や涙、眼瞼の浮腫み
- ・痛みと同じ側の鼻水や鼻づまり
- ・痛みと同じ側の発汗
となります。
群発頭痛でも片頭痛と同様に脳血管が拡張して痛みを生じますが、眼動脈という目の奥へ行く血管に限定され、血管の炎症と浮腫みが加わります。そのため、片頭痛と同じトリプタンやベラパミルの他、炎症を抑えるためにステロイドホルモンが用いられます。
睡眠時頭痛
睡眠中のみに、頻繁に繰り返し起こる頭痛で、別名「目覚まし時計頭痛」(alarm clock headache)1)とも言われ、15分から4時間続くとされています。
原因はまだ充分には分かっていませんが、脳の視床下部という場所の機能異常2)ではないかと考えられています。
治療には、カフェインやインドメタシンなどの薬が用いられます。
当院の経験では、純粋に睡眠時頭痛と特定できた症例はなく、調べてみたら他の疾患だった場合が多くを占めています。
睡眠時無呼吸性頭痛
睡眠時無呼吸症候群3)という疾患があります。睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態で、いびきが多く熟睡できないために、日中に眠気が襲ってくるといった症状が特徴です。
脳の血管は血液中の酸素が多いか二酸化炭素が少ないと収縮し、逆の場合には拡張するという特性があります。このため、片頭痛や群発頭痛の発作時に酸素をすったり過呼吸を行うと血管が収縮して痛みが軽くなります。
睡眠時無呼吸症候群では、夜間睡眠中に血液中の酸素濃度が減って二酸化炭素濃度が上昇するため、朝目が覚めた時点で頭痛を生じます。元々片頭痛のある場合はさらに悪化する事となります。
参考
- Hypnic headache – The Migraine Trust
- Neurology Consultants Medical Group, Whittier, CA. “Alarm Clock” Headaches
- 睡眠時無呼吸症候群 – 千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学
(文責:理事長 丹羽 直樹)