可逆性脳血管攣縮症候群の症状・原因・診断・治療

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の症状は、雷鳴頭痛と言われる急な激しい頭痛です。基本的には予後(発症後の経過)は良好で、死亡率は1%未満、再発率は5〜8%であり、ほとんどの方は後遺症なく改善します。1) 2)

しかし3~6%では脳梗塞や脳出血など何らかの後遺症を残すとされ、それらの合併症を見逃さない注意が必要です。

横浜脳神経内科では、頭痛の診療ガイドライン2021および脳卒中治療ガイドライン2021に準拠し、さらにこれまでの症例経験に基づいてその診断方法を工夫してきました。

RCVSの特徴である血管攣縮は、頭部MRA検査(MRI検査による血管撮影)で80%の感度で検出できるとされます3)。

RCVSと同様に脳動脈が細くなる疾患として原発性中枢神経系血管炎などの血管炎(自己免疫的な病気)や、動脈硬化による狭窄などの場合は、経過や治療が異なるため、その判別は非常に重要となります。

他疾患とのより正確な鑑別のため、雷鳴頭痛(突然の激しい頭痛)である事、脳内の最も太い動脈である内頚動脈の変化、原因薬剤や息こらえ、感情の変化などのきっかけの有無などが診断に役立ちます。

可逆性脳血管攣縮症候群の診断困難例

症例1(診断法の工夫)

40代の女性で、10代の頃から片頭痛がありました。

会社で会議中、突然後頭部の割れるような激しい痛みが出現、約30分でいったん痛みは治まりました。帰宅して入浴中に、頭部全体の激痛が始まったため、持っていたトリプタンを飲んだものの効果がありませんでした。

その後も4日間頭痛は続き、今までの片頭痛でこれ程長く続く事はなかったため横浜脳神経内科を受診しました。

頭部MRA検査(脳血管の撮像)をしたところ、

PCA

 

 

ASL血流低下

 

ASL正常例

 

 

 

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の標準的治療法はまだ明らかにされていません。

症例2(治療法の工夫)

元々頭痛持ちという程ではないものの、低気圧の時や月経時に頭痛はあったという30代の女性です。たいていは市販の治療薬を飲んで一晩寝れば頭痛は治まっていたので、さほど気にしてはいませんでした。

夕食を済ませシャワーを浴びていたところ、突然後頭部の激しい痛みに襲われました。その後いったん痛みは軽くなったものの、翌日やはりシャワーを浴びた時に、同様の激しい頭痛に襲われました。寝ようと思って横になると痛みが強くなり、眠った後も激しい痛みで目が覚めてしまう状態でした。翌朝以降も断続的に頭痛は続いていたため横浜脳神経内科を受診しました。

MRI検査では脳内や脳表面には異常はありませんでした。

MRA検査(MRI検査による脳血管撮影)では、

後大脳動脈の攣縮

 

 

 

 

 

 

  • ①まず今の辛い痛みを取る事
  • ②できるだけ早期に元の状態に戻す事
  • ③完治するまで慎重に経過観察を行う事

 

 

 

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の治療薬としては、

・鎮痛薬(インドメタシンまたは類似薬)

・血管拡張薬(脳血管選択的Ca拮抗薬)

の2種類を主軸として使用します。

症例によっては

・交感神経遮断薬(プロプラノロールなど)

・抗てんかん薬(バルプロ酸など)

 

 

 

文献

  1. Kano Y, Inui S, Uchida Y, Sakurai K, Muto M, Sugiyama H, Takeshima T, Yuasa H, Yamada K, Matsukawa N. Quantitative arterial spin labeling magnetic resonance imaging analysis of reversible cerebral vasoconstriction syndrome: A case series. Headache. 2021 Apr;61(4):687-693. doi: 10.1111/head.14094. Epub 2021 Mar 15.
  2. Shih-Pin Chen et al. Magnetic resonance angiography in reversible cerebral vasoconstriction syndromes. Ann Neurol. 2010 May;67(5):648-56.
  3. Parth Upadhyaya, Arathi Nandyala, Jessica Ailani. Primary Exercise Headache. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020 Apr 15;20(5):9. doi: 10.1007/s11910-020-01028-4.
  4. Shih-Pin Chen, Albert C Yang, Jong-Ling Fuh, Shuu-Jiun Wang. Autonomic dysfunction in reversible cerebral vasoconstriction syndromes. The Journal of Headache and Pain 2013:14:94
  5. érôme Mawet, Stéphanie Debette, Marie-Germaine Bousser, Anne Ducros. The link between migraine, reversible cerebral vasoconstriction syndrome and cervical artery dissection. Headache. 2016 Apr;56(4):645-56. doi: 10.1111/head.12798. Epub 2016 Mar 26.

 

(文責:理事長 丹羽 直樹

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