可逆性脳血管攣縮症候群の症状・原因・診断・治療

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の症状・原因・診断・治療について説明します。

可逆性脳血管攣縮症候群の症状・原因・診断・治療

 

可逆性脳血管攣縮症候群の症状

一般に、雷鳴頭痛と言われる急な激しい頭痛で発症します。後頭部を中心とした痛みの事が多く、痛みが頭全体に拡がる傾向があります。その後、断続的に頭痛を繰り返す状態が続きます。また、頭痛の場所が移動する事もあります。まれに、頭痛以外の症状で発症する場合もあります。基本的に予後(発症後の経過)は良好で、死亡率は1%未満、再発率は5〜8%です。そして、ほとんどの方は後遺症なく改善します。1) 2)

しかし、3~6%では脳梗塞や脳出血など何らかの後遺症を残すとされます。したがって、それらの合併症を見逃さない注意が必要です。

 

可逆性脳血管攣縮症候群の原因

可逆性脳血管攣縮症候群の発症には、何らかのトリガーとなる誘発要因があります。

  • ・入浴やシャワー
  • ・排便
  • ・性交
  • ・咳やくしゃみ
  • ・潜水やダイビング
  • ・興奮や大声
  • ・息を止めて力を入れる動作
  • ・精神的ストレス
  • ・血管作働性薬物
  • ・急性副鼻腔炎のような頭蓋内の炎症
  • ・女性ホルモンの変化

こうした状況が引き金となり、脳血管平滑筋の過剰収縮を引き起こします。さらに、交感神経系の過剰な緊張状態を伴い、血圧上昇をきたす事もあります。一方で、片頭痛と同様の三叉神経系の過敏状態をきたし、痛みが増幅されます。

 

可逆性脳血管攣縮症候群の診断

当院では、頭痛の診療ガイドライン2021および脳卒中治療ガイドライン2021に準拠し、さらに、診断方法を工夫してきました。

血管攣縮は、頭部MRA検査で80%の感度で検出できるとされます3)。

 

可逆性脳血管攣縮症候群の治療

治療としては、可逆性脳血管攣縮症候群の原因である

  • 1. 脳血管平滑筋の過剰な緊張状態
  • 2. 交感神経系の過剰状態
  • 3. 三叉神経系の過敏状態

を適正化するための薬物治療が主となります。

  • 1. カルシウム拮抗薬(血管拡張薬)
  • 2. 交感神経遮断薬
  • 3. 抗てんかん薬

などを必要に応じて組み合わせて使用します。

また、発症の誘因となった状況を取り除き、悪化を防ぐ必要があります。

 

症例1(診断法の工夫)

40代の女性で、10代の頃から片頭痛がありました。

シャワーを浴びたところ、突然後頭部の割れるような激しい痛みが出現。しかし、翌日入浴中に再び頭部全体の激痛が始まりました。そこで、持っていたトリプタンを飲んだものの効果がありませんでした。

その後も4日間頭痛は続き、当院を受診しました。

MRA検査をしたところ、

小脳腫瘍

通常変化がよく見られる後大脳動脈(赤印)を見ても、血管攣縮がはっきりしません。

そこで、ASL(arterial spin labeling)法という脳血流を見る検査を行いました。

小脳腫瘍

結果、後頭葉の血流が低下していました。(青い部分が血流低下領域です)

正常例では、下のようにほぼ均等に血流分布が見られます。

小脳腫瘍

 

症例2(治療法の工夫)

元々低気圧の時や月経時に頭痛があった30代の女性です。シャワーを浴びたところ、突然後頭部の激しい痛みに襲われました。その後いったん痛みは軽くなったものの、翌日やはりシャワーを浴びた時、同様の激しい頭痛に襲われました。翌朝以降も断続的に頭痛は続いていたため、当院を受診しました。

MRA検査を行いました。

可逆性脳血管攣縮症候群の症状・原因・診断・治療

 

 

  • ①まず今の辛い痛みを取る事
  • ②できるだけ早期に元の状態に戻す事
  • ③完治するまで慎重に経過観察を行う事

に分類されている頭痛の一部が可逆性脳血管攣縮症候群である可能性が示唆されています。これらの頭痛にはインドメタシンが有効であり、当院ではこの点に注目し鎮痛薬としてインドメタシン類似薬を使用しています。

一次性運動時頭痛に対しβ遮断薬(交感神経遮断薬)が有効であるとされています。4)

また近年では、可逆性脳血管攣縮症候群と片頭痛は、ひと続きの病態であるという見方がなされています。5)したがって、片頭痛の予防薬で有効性の高いバルプロ酸も、症例によって用いています。

 

文献

  1. Kano Y, Inui S, Uchida Y, Sakurai K, Muto M, Sugiyama H, Takeshima T, Yuasa H, Yamada K, Matsukawa N. Quantitative arterial spin labeling magnetic resonance imaging analysis of reversible cerebral vasoconstriction syndrome: A case series. Headache. 2021 Apr;61(4):687-693. doi: 10.1111/head.14094. Epub 2021 Mar 15.
  2. Shih-Pin Chen et al. Magnetic resonance angiography in reversible cerebral vasoconstriction syndromes. Ann Neurol. 2010 May;67(5):648-56.
  3. Parth Upadhyaya, Arathi Nandyala, Jessica Ailani. Primary Exercise Headache. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020 Apr 15;20(5):9. doi: 10.1007/s11910-020-01028-4.
  4. Shih-Pin Chen, Albert C Yang, Jong-Ling Fuh, Shuu-Jiun Wang. Autonomic dysfunction in reversible cerebral vasoconstriction syndromes. The Journal of Headache and Pain 2013:14:94
  5. érôme Mawet, Stéphanie Debette, Marie-Germaine Bousser, Anne Ducros. The link between migraine, reversible cerebral vasoconstriction syndrome and cervical artery dissection. Headache. 2016 Apr;56(4):645-56. doi: 10.1111/head.12798. Epub 2016 Mar 26.

 

(文責:理事長 丹羽 直樹

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