頭痛に伴うめまいや吐き気の場合、対処が診断により異なります。
症例
高校生の頃から頭痛持ちだった20代後半の女性です。時々めまいがあり、耳鼻科で良性発作性頭位めまい症と言われた事がありました。ある日急に、今まで経験した事のないような激しい回転性めまいと吐き気に襲われ、頭痛も出現して立っている事ができなくなりました。翌日めまいと吐き気は軽くなったものの、頭痛が強くなってきたため横浜脳神経内科を受診しました。
急な頭痛と吐き気やめまいが起きた場合、まず脳の病気を否定する必要があるため、MRI検査を行いましたが、異常はありませんでした。
頭痛がなくめまいと吐き気だけであれば、メニエール病や良性発作性頭位めまい症など耳鼻科の病気が考えられますが、この方の場合は同時期に頭痛も伴っています。
平衡感覚は、耳の奥の内耳にある三半規管が関係します。
三半規管で頭の向きを感じた後、その情報は前庭神経から脳に伝わります。
体のバランスは
- 三半規管からの平衡感覚
- 目でみた視覚情報
- 足の裏で感じた感覚
などを脳の内部で統合して判断しています。これらの情報にミスマッチが生じた場合にめまいを感じます。フワフワする場合も、天井が回って感じる場合もあります。
片頭痛では、脳の内部で様々な感覚が過敏になります。痛みだけでなく、光や音、臭いに過敏になり、平衡感覚に対して過敏になる事もあります。
この方の場合、よく聞いてみると、元々乗り物酔いしやすかったり、立ちくらみが多かったとの事です。揺れや体の動きに過敏になっている事の現れです。症状と経過から、日本めまい平衡医学会の診断基準1) に基づき、前庭性片頭痛というめまいを伴う片頭痛と診断しました。
前庭性片頭痛は国際頭痛分類第3版2)でも正式に取り上げられています。
文献
- 前庭性片頭痛 (Vestibular Migraine) の診断基準 (Barany Society: J Vestib Res 22: 167-172, 2012):Equilibrium Res Vol. 78(3) 230~231,2019
- 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類第3版(日本語版).医学書院,東京,2018
(文責:理事長 丹羽 直樹)