首筋から後頭部の痛みで受診する方は比較的多いようです。
MRA検査(MRIを使って脳血管を描き出す方法)で脳血管の変化をとらえる事で、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)や椎骨動脈解離といった重大な疾患が見つかる事があります。
ところが、この2つの疾患はMRAでも区別が難しい症例が存在します。
症例
元々片頭痛のある30代の女性で、スポーツジムで筋トレーニングをしていた際に、突然右のうなじから後頭部にかけて激痛が走りました。翌日になっても痛みが続いていたため横浜脳神経内科を受診しました。
MRA検査を見たところ、
右椎骨動脈(右の首から後頭部へ行く血管)が変形しています。この所見だけを見ると、可逆性脳血管攣縮症候群とも椎骨動脈解離とも取れます。
——(以下は他の椎骨動脈解離症例)——
※椎骨動脈解離では、下のように血管のくびれや膨らみが見られます。
しかし、椎骨動脈解離の場合には、T1BB法(T1 black blood method)という特殊な撮像法を行うと、
このように血管壁にできた血栓(血液の固まり)が白く写ります。
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この方の場合、T1BB法で見ても血栓を示す白い部分はありません。
さらに、ASL(arterial spin labeling)法1)という脳血流を見る検査で、
後頭葉の血流が低下しており、これは可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)でしばしば見られる所見です。
このように、複数の検査方法を組み合わせる事で、この症例は椎骨動脈解離ではなく椎骨動脈に生じた可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と診断できます。
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と椎骨動脈解離とは、どちらも片頭痛の方に発症する事が多く、症状も似ているため、慎重に診断しなくてはなりません。
文献
(文責:横浜脳神経内科副院長 木島 千景)