片頭痛と食べ物|予防・悪化のポイントとセルフチェック
片頭痛と食べ物の関係とは?
食べ物が片頭痛に影響しているのでは?と感じた事がありませんか。実は、食事内容や食べ方を見直すことで片頭痛の「予防」や「悪化防止」ができる場合があります。この記事では、専門医監修のもと、片頭痛と食べ物の関係から、日常で実践できる具体的な食事法・セルフチェック方法まで分かりやすく解説します。
片頭痛を悪化させやすい食べ物・飲み物
- 血管拡張作用のある成分
- ・ヒスタミン(赤ワインなど)
- ・チラミン(チーズ、チョコレートなど)
- ・亜硝酸塩(加工肉、ハム、ソーセージなど)
- ・アルコール
- その他注意したい食品
- ・ファストフード
- ・コンビニ食品
- ・インスタント食品
- ・お菓子・加工食品・インスタントラーメン
これらの食品は、片頭痛予防になるオメガ3脂肪酸や鉄分、マグネシウムが少なく、悪化要因となる可能性があります。お菓子やインスタントラーメンなどの加工食品に含まれるグルタミン酸ナトリウムは、血管拡張を誘発して片頭痛の原因となります。
体質によっては、これらの食品でも症状が出ない場合もあります。大切なのは「自分に合わないもの」を知る事です。
セルフチェック:あなたの片頭痛トリガーを見つけよう
- ・頭痛が起きた日・時間・食べた物を食事日記に記録する
- ・頭痛が出やすいパターン(空腹時・特定の食品摂取後など)をチェック
- ・数週間続けてみて、共通点があればその食品を控えてみる
例: 「4月10日 朝:パン・卵/昼:パスタ/夜:焼き魚/間食:チョコレート → 夕方頭痛」 このように、簡単なメモでも充分です。
片頭痛予防に役立つ食べ物・栄養素
- ・マグネシウム
- 海藻、大豆製品、玄米、ほうれん草、ナッツ、魚介類
- ・ビタミンB2
- 魚、肉、卵、納豆、玄米、ほうれん草
- ・オメガ3脂肪酸
- サケ、マグロ、サバ、甲殻類
和食中心のメニューや、サバのみそ煮・納豆ご飯・味噌汁など「手軽に作れる組み合わせ」を日常に取り入れると続けやすくなります。引用文献1)2)3)をご参照ください。
腸内環境を整える食べ方も大切
- ・発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)
- ・食物繊維(野菜、海藻、きのこ類)
腸内環境のバランスが自律神経や炎症に影響し、片頭痛の予防にも役立つと考えられています。4)
サプリメント活用時の注意点
サプリメントで栄養素を補う場合は、服薬中の薬や体質によって効果・安全性が変わる事もあります。必ず専門医に相談しましょう。
日常生活でできる片頭痛予防の食事・生活習慣
- ・規則正しい食事時間を守る
- ・空腹・低血糖を避ける
- ・和食中心の食生活を心がける
- ・腸内環境を整える食材を意識する
- ・まずは1つずつ、無理なく始める
さらに1歩進んだ片頭痛の食事療法
鉄欠乏性貧血対策
鉄欠乏性貧血は片頭痛を悪化させます。したがって、日々の鉄分の摂取が大事ですが、食事だけで充分な量を摂るには不充分です。特に、女性の場合月経時の出血により鉄分が失われるため、貯蔵鉄が足りないと慢性的な鉄欠乏性貧血になりやすく、月経関連頭痛を悪化させる可能性があります。5)
たとえば、充分量の鉄分摂取には、レバー1日300g、カツオ1.5kg、ほうれん草1.5束などが必要となり、現実的ではありません。そこで、適切なサプリメントの導入を検討するようお勧めします。
ビタミンB群の積極的摂取
ビタミンB2は片頭痛予防になりますが、それ以外のビタミンB群も体内の代謝を助けるために必要となります。したがって、ビタミンB群を効率的に摂取するために、積極的なサプリメントの活用が推奨されます。
血糖値スパイクの是正
低血糖は片頭痛を誘発します。当院の経験上、朝起きた時や夕方に片頭痛を起こす方が多く見られます。起床時は前夜の夕食から時間が経っており、夕方は昼食から夕食までの時間が空いているために、いずれも低血糖になっている可能性が考えられます。このような血糖値の乱高下(血糖値スパイク)を避ける事が大事です。
したがって、寝る前と午後に軽い間食を摂る事をお勧めします。しかし、この時に血糖値が上がり過ぎると反動で低血糖となりやすく、甘い物よりはナッツ類などが適切です。
グルテンフリー
小麦にはグルテニンとグリアジンという2つのタンパク質が含まれています。小麦粉を水を加えてこねることにより、この2つのタンパク質が絡み合って、グルテンができます。
グルテンは人間には消化吸収できないため、腸の粘膜に貼り付いて、体外に排出されず異物として貯まっていきます。その結果、腸内の粘膜がダメージを受け、様々な不調を引き起こすと考えられています。代表的な不調は、下痢や便秘、腹痛といった消化器系の症状です。消化吸収機能が低下すると、鉄分や必要な栄養素が不足して片頭痛や月経前症候群(PMS)などの症状を引き起こす恐れがあります。
当院の経験では、グルテンフリー食に徹底したところ片頭痛が激減したという声をしばしば聞きます。
よくある質問Q&A
Q1. 片頭痛の時に食べてはいけないものは?
A1. 赤ワイン、チーズ、加工肉(ハム・ソーセージ)、チョコレート、インスタント食品、アルコールなどは片頭痛を誘発しやすいとされています。ただし、全員に当てはまるわけではないので、ご自身の体調と照らし合わせて判断しましょう。
実際の声:「チョコレートはNGと聞いて避けていましたが、私の場合は食べても頭痛が出ません。」
よくある誤解:「全ての人がチーズや赤ワインで必ず頭痛になると思っていました。」
Q2. 片頭痛の時にお勧めの食べ物は?
A2. マグネシウムやビタミンB2、オメガ3脂肪酸を含む食品(海藻、魚、ナッツ、納豆、玄米など)や、発酵食品、野菜中心の和食がお勧めです。
実際の声:「納豆や味噌汁を毎日の習慣にしたら、頭痛の頻度が減った気がします。」
よくある誤解:「特別なサプリメントを飲まないと予防できないと思っていました。」
Q3. 空腹や食べ過ぎは片頭痛に関係しますか?
A3. 空腹や低血糖は片頭痛を誘発しやすいので、規則正しい食事を心がけましょう。逆に食べ過ぎも体調を崩す原因になるため、バランスが大切です。
実際の声:「朝食を抜くと必ず頭痛が起きるので、必ず何か食べるようにしています。」
よくある誤解:「食べ過ぎたときだけ頭痛になると思っていましたが、空腹も良くないんですね。」
Q4. コーヒーやカフェインは片頭痛に悪いですか?
A4. カフェインは人によっては片頭痛を和らげる場合もありますが、過剰摂取や常用は逆効果になる事もあります。ご自身の体質に合わせて適量を守りましょう。
実際の声:「コーヒーを1杯飲むと頭痛が楽になることもありますが、飲み過ぎると逆に悪化します。」
よくある誤解:「カフェインは絶対にダメだと思っていました。」
Q5. 片頭痛の時に水分補給は必要ですか?
A5. 脱水は片頭痛のリスクを高めます。こまめな水分補給を心がけましょう。
実際の声:「仕事が忙しくて水分をとるのを忘れると、頭痛が出やすい気がします。」
よくある誤解:「水分補給と頭痛は関係ないと思っていました。」
Q6. 子どもや妊娠中でも同じ食事対策で良いですか?
A6. 子どもや妊娠中の方は、食事内容や摂取量に注意が必要です。自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。
実際の声:「妊娠中は自己判断せず、医師に相談して対策を決めました。」
よくある誤解:「大人と同じ方法をそのまま子どもに試しても大丈夫だと思っていました。」
参考および引用文献
- 1) A Peikert, C Wilimzig, R Köhne-Volland. Prophylaxis of migraine with oral magnesium: results from a prospective, multi-center, placebo-controlled and double-blind randomized study. Cephalalgia. 1996 Jun;16(4):257-63.
- 2) 日本頭痛学会|その他の予防療法(Mg, ビタミンB2, feverfew, NSAIDs)は片頭痛治療に有効か
- 3) 日本脂質栄養学会|頭痛とオメガ3の関係を発見!
- 4) Parisa Gazerani, Laura Papetti, Turgay Dalkara, Calli Leighann Cook, Caitlin Webster, Jinbing Bai. The Brain, The Eating Plate, and the Gut Microbiome: Partners in Migraine Pathogenesis: Nutritents. 2024 Jul 11;16(14):2222.
- 5) Selen Gür-Özmen, Ruhan Karahan-Özcan. Iron Deficiency Anemia Is Associated with Menstrual Migraine: A Case-Control Study. Pain Med . 2016 Mar;17(3):596-605.
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設

