今までと違う頭痛

今までと違う頭痛が起きた場合、脳血管の病気を考える必要があります。

今までと違う頭痛

症例

40代の女性です。高校生の頃から時々頭痛があり、市販の痛み止めを飲んでいました。
ある日の夕方、急に左の首から後頭部にかけての痛みと吐き気、めまいを感じました。
肩こりか筋肉痛だと思い、しばらく様子を見ていましたが、その後4日間いっこうに痛みはなくなりませんでした。
「これはおかしい、今までの頭痛とは痛み方も場所も違う」と感じて横浜脳神経内科を受診しました。

脳の血管は下の図のように首から脳の中につながっています。

脳動脈

首の骨(頸椎)の左右両側に沿って頭の方へ上がっていく椎骨動脈という血管があり、脳の中に入る手前で左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈になります。

MRA(MRIを使って脳血管を見る検査)を行いました。

左椎骨動脈解離画像

左の椎骨動脈がデコボコしています。よく見ると、くびれている部分(青矢印)と膨らんでいる部分(赤矢印)ができています。右側の正常な椎骨動脈と比べると、かなり形が違います。
これは「椎骨動脈解離」といって、血管の壁が裂けてしまった状態です。

下の図のようなしくみです。

椎骨動脈解離のメカニズム
  1. ①血管壁の内側がはがれると、すき間に血液が流れ込んで貯まってきます。
  2. ②貯まった血液は次第に固まってきて、内側に飛び出てきます。
  3. ③この部分は壁が薄くて弱いので、外側に膨らんでくる事もあります。

もし悪化した場合、
②が進行すれば血管が詰まって脳梗塞を起こす
③が進行すれば破裂してくも膜下出血を起こす

という2通りの危険があり得ます1) 。

椎骨動脈解離は、後頭部の激しい痛みで発症する事が特徴で、片頭痛の方に多い傾向があります。入院して治療する必要がある2) ため、救急病院へ救急車で搬送していただきました。

椎骨動脈の途中までは首の骨に固定されており、その上の脳底動脈は頭部に固定されていて動けません。逆Yの字の中間部分だけが固定されておらず、首を動かす度にねじられて負担がかかる事になるので、この部分によく発症します。

文献

  1. 後藤 淳. 虚血性脳卒中:診断と治療の進歩 IV.最近の話題 1.脳動脈解離. 日内会誌 98:1311~1318,2009.
  2. Ⅵ.その他の脳血管障害 – 日本神経治療学会

(文責:理事長 丹羽 直樹

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