可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)とは?
可逆性脳血管攣縮症候群は、一過性の激しい頭痛(雷鳴頭痛)を繰り返すのが特徴の脳血管障害です。20~50代の女性に多く、早期診断と適切な治療で多くの場合は後遺症なく回復します。
RCVSの主な症状と特徴
- ・突然発症する激しい頭痛(雷鳴頭痛)
- ・頭痛が1か月以内に繰り返し起こる
- ・吐き気、嘔吐、視覚異常、手足のしびれなどを伴うことも
- ・症状は1~3時間続き、中等度の痛みがその後も残る場合あり
発症のメカニズムと主な誘因
- ・入浴、排便、運動、性行為、強い感情変化などがきっかけ
- ・妊娠・出産、薬剤(片頭痛治療薬や抗うつ薬など)も誘因となることがある
- ・20~50代女性に多い
診断方法・検査の流れ
- ・医師による問診と症状の確認
- ・画像検査(MRA、CTA、MRIなど)で血管の狭窄を確認
- ・初期検査で異常がなくても再検査が重要
- ・くも膜下出血や片頭痛など他疾患との鑑別が必要
治療・禁忌薬剤・管理方針
- ・急性期は安静と症状緩和が中心
- ・血管収縮作用のある薬剤(トリプタン、エルゴタミンなど)は使用禁止
- ・妊娠・授乳中は安全な薬剤(アセトアミノフェン等)で対応
- ・ほとんどの患者が1~3か月で回復
実際の症例紹介
実際にRCVSを経験した患者さんのエピソードを紹介します。
症例1:入浴で発症した症例
元々片頭痛持ちの30代女性です。
入浴中、急に「バチン」と頭の中で何かが弾けるような激痛が走りました。慌てて浴槽から出て、あまりの痛みで床にうずくまってしまいました。這うように浴室から出て、30分位横になっていると、いったん痛みは軽くなりました。
翌朝、シャワーを浴びたところ、やはり同じような頭全体に響く痛みが出現しました。今までの片頭痛とは違うと感じ、近くの脳神経外科を受診しました。頭部MRI、MRA検査を受けたものの、異常は見られませんでした。
翌々日、今度は恐る恐るぬるい温度のお湯を体にかけました。すると、やはり激しい頭痛を生じたため、すぐに浴室から出ました。心配になり、横浜脳神経内科を受診しました。
頭部MRA検査で脳の血管を撮影しました。
後大脳動脈という後頭部の血管が所々細くなっており、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。初回のMRA検査では異常が見られない事もありますが、症状が続く場合は再度検査を行うことが重要です。実際に再検査で特徴的な血管の狭窄が確認され、診断につながりました。
症例2:排便で発症した症例
元々片頭痛のある50代女性で、慢性的な便秘がありました。
排便の際、トイレでいきんだところ、突然後頭部を殴られたような激しい痛みが走りました。さらに、嘔吐もしました。鎮痛剤を飲んでいったん頭痛は軽くなったものの、完全には治まりませんでした。
翌朝排便後に再び同様の激しい頭痛が出現し、今度は鎮痛剤を飲んでも効きませんでした。そこで、何か脳の病気ではないかと心配になり、横浜脳神経内科を受診しました。
頭部MRA検査で脳の血管を撮影しました。
至る所で脳血管がくびれており、比較的太い血管が収縮している状態が見られました。特徴的な所見から、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。
よくある質問(FAQ)
Q1. RCVSは再発しますか?
A1. 通常は再発しませんが、誘因の回避が大切です。
Q2. どんな場合に受診すべき?
A2. 突然の激しい頭痛や神経症状(しびれ・麻痺など)があれば、すぐに専門医を受診してください。
Q3. 日常生活で注意することは?
A3. 誘因となる行動や薬剤を避け、症状があれば早めに受診しましょう。
まとめ・受診のすすめ
- ・RCVSは早期発見・治療で予後良好
- ・強い頭痛や神経症状があれば、迷わず医療機関を受診しましょう
引用文献
- ・Yu-Hsiang Ling, Yen-Feng Wang, Jiing-Feng Lirng, Jong-Ling Fuh, Shuu-Jiun Wang, Shih-Pin Chen. Post-reversible cerebral vasoconstriction syndrome headache. J Headache Pain. 2021 Mar 25;22(1):14
- ・Jérôme Mawet, Stéphanie Debette, Marie-Germaine Bousser, Anne Ducros. The link between migraine, reversible cerebral vasoconstriction syndrome and cervical artery dissection. Headache. 2016 Apr;56(4):645-56. doi: 10.1111/head.12798. Epub 2016 Mar 26.
—————————————————————
この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設