薬物乱用頭痛とは?
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の「使い過ぎ」が原因で、かえって頭痛が慢性化してしまう状態です。この記事では、薬物乱用頭痛の症状や見分け方、治療・予防のポイント、慢性片頭痛との違いまで、専門医の視点から詳しく解説します。
主な症状とセルフチェックリスト
- ・頭痛が毎日または頻繁に起こる
- ・朝方や起床時に頭痛が強い
- ・以前より頭痛薬が効きにくい
- ・頭痛の性質や部位が日によって違う
セルフチェックの目安
- ・月に15日以上、頭痛がある
- ・月に10回以上、頭痛薬を飲んでいる
- ・頭痛薬をやめると頭痛が悪化する
- ・市販薬を自己判断で続けている
原因とリスク要因
薬物乱用頭痛の主な原因は「頭痛薬の使い過ぎ」です。特に以下の薬剤で起こりやすいとされています。
- ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)
- ・トリプタン製剤
- ・エルゴタミン製剤
- ・複合鎮痛薬(カフェイン入りなど)
リスクが高まるケース
- ・片頭痛や緊張型頭痛が元々ある
- ・市販薬を自己判断で長期間使用している
- ・頭痛が不安で予防的に薬を飲んでしまう
診断基準と自己診断の目安
- ・頭痛が月に15日以上ある
- ・3ヶ月以上、頭痛薬を月10日以上(種類によっては15日以上)服用している
- ・頭痛薬の使用をやめると症状が軽減する
ご自身の頭痛の頻度や薬の使用回数を「頭痛ダイアリー」に記録することで、診断や治療に役立ちます。
治療法と治療の流れ
- 原因薬剤の中止(急激にやめる方法と、徐々に減らす方法がある。医師の指導のもとで行う)
- 離脱症状の対処(中止後1~2週間は頭痛が悪化することがある。必要に応じて予防薬や補助療法を使用)
- 予防薬・補助療法(抗うつ薬や漢方薬など、頭痛の再発を防ぐ薬を使う場合も)
- 再発予防のポイント(自己判断による乱用を避け、定期的な医療機関でのフォローが大切)
予防と再発防止のためにできる事
- ・頭痛薬は必要最小限の回数にとどめる
- ・頭痛ダイアリーで自分の頭痛パターンを把握する
- ・規則正しい生活と充分な睡眠
- ・ストレス管理やデジタル機器の使い過ぎに注意
Q&A:よくある質問
Q1. 薬物乱用頭痛はどんな人に多いですか?
A1. 薬物乱用頭痛は、元々片頭痛や緊張型頭痛がある人に多く見られます。特に、市販薬や処方薬を自己判断で長期間・頻繁に使っている場合にリスクが高まります。
Q2. 薬物乱用頭痛と普通の頭痛はどう違いますか?
A2. 普通の頭痛は一時的な事が多いですが、薬物乱用頭痛は薬の使い過ぎによって頭痛が慢性化し、薬を飲んでも効きにくくなります。また、頭痛の頻度や性質が変化する事も特徴です。
Q3. どんな薬で薬物乱用頭痛が起こりやすいですか?
A3. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、トリプタン製剤、エルゴタミン製剤、市販の複合鎮痛薬(カフェイン入りなど)で起こりやすいとされています。
Q4. 薬物乱用頭痛はどうやって治しますか?
A4. 治療の基本は、原因となっている頭痛薬の使用を中止または減量する事です。急にやめる場合と徐々に減らす場合があり、医師の指導の基で行います。必要に応じて予防薬や補助療法も使います。
Q5. 薬物乱用頭痛は再発しますか?
A5. 薬物乱用頭痛は再発しやすい傾向があります。再発予防のためには、薬の使い方を見直し、頭痛ダイアリーで記録をつける事や、定期的に医療機関でフォローを受ける事が大切です。
Q6. 早めに受診した方がいいのはどんな時?
A6. 「頭痛薬を飲む回数が増えてきた」「薬が効きにくい」「頭痛が毎日のように続く」と感じたら、早めに専門医に相談しましょう。早期発見と治療が改善への近道です。
慢性片頭痛との関係・当院の見解
慢性片頭痛という、頭痛が月に15日以上の頻度で3ヶ月を超えて起こる状態があります。つまり、薬物乱用頭痛も慢性片頭痛も同様の基準となっているのです。
当院の経験では、実際には薬を中止後頭痛の頻度は多少減ったものの、強い頭痛はなくならないケースがあります。
鎮痛剤を飲まざるを得なくなった元々の頭痛は、いったいどういう頭痛なのでしょうか?元の頭痛が何かという考察が必要で、鎮痛剤を止めただけでは根本的解決になりません。
元々の頭痛の多くは片頭痛であり、慢性化した原因を突き止める必要があります。片頭痛を悪化させる様々な要因が分かっています。慢性片頭痛は、外部環境や生活習慣の問題により、脳内の痛みの伝達系に異常を生じている状態と考えられています。そもそも片頭痛ではない可能性も考える必要があります。
まず問診を正確に行い、片頭痛を悪化させている要因を明らかにする事が第一段階です。不安や精神的ストレスが片頭痛を悪化させている場合には、抗不安薬や抗うつ薬を用いたり、心療内科との連携をはかります。PCやスマートフォンの見過ぎ、不規則な睡眠リズムなど生活習慣が原因であれば、改善するためのアドバイスを行い、補助的治療薬を処方します。
まとめ
薬物乱用頭痛は、早期発見・適切な治療が大切です。「頭痛薬を飲む回数が増えてきた」「薬が効きにくい」と感じたら、自己判断せず早めに専門医にご相談ください。
参考文献
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設

