薬物乱用頭痛の定義
薬物乱用頭痛とは、国際頭痛分類第3版では、月に15日以上の頭痛で3ヶ月を超えて鎮痛剤を飲んでいる状態と定義されています。
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の過剰使用によって引き起こされる慢性的な頭痛の一種です。この状態は、通常、片頭痛を持つ人が、痛みを和らげるために薬を頻繁に使用する事から始まります。
症状
薬物乱用頭痛の症状は、通常の頭痛と似ていますが、特有の特徴があります。これには、頭痛が毎日またはほぼ毎日発生し、朝方や早朝に特に強くなる事が含まれます。また、痛みの強さは変動する場合があり、通常の鎮痛薬が効きにくくなる事もあります。
原因
この頭痛は、急性期の頭痛治療薬を長期間にわたって使用する事により生じます。特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やトリプタン、エルゴタミンなどが原因となる事が多いです。
治療法
薬物乱用頭痛の治療は、まず原因となる薬剤の使用を中止する事が基本です。多くの患者は、薬を止めることで頭痛が改善しますが、約30%の人は再発する可能性があります。治療には、薬物の急激な中止や徐々に減量する方法があり、医療機関での適切な管理が重要です。
予防
薬物乱用頭痛を予防するためには、頭痛薬の使用を適切に管理し、必要以上に服用しない事が大事です。また、頭痛の根本的な原因を特定し、適切な治療を受ける事も大切です。
当院の見解
慢性片頭痛という状態があり、頭痛が月に15日以上の頻度で3ヶ月を超えて起こる状態とされています。つまり、薬物乱用頭痛も慢性片頭痛も同様の基準となっているのです。
当院の経験では、実際には薬を中止後頭痛の頻度は多少減ったものの、強い頭痛はなくならないケースがあります。
鎮痛剤を飲まざるを得なくなった元々の頭痛は、いったいどういう頭痛なのでしょうか?元の頭痛が何かという考察が必要で、鎮痛剤を止めただけでは根本的解決になりません。
元々の頭痛の多くは片頭痛であり、慢性化した原因を突き止める必要があります。片頭痛を悪化させる様々な要因が分かっています。慢性片頭痛は、外部環境や生活習慣の問題により、脳内の痛みの伝達系に異常を生じている状態と考えられています。そもそも片頭痛ではない可能性も考える必要があります。
まず問診を正確に行い、片頭痛を悪化させている要因を明らかにする事が第一段階です。不安や精神的ストレスが片頭痛を悪化させている場合には、抗不安薬や抗うつ薬を用いたり、心療内科との連携をはかります。PCやスマートフォンの見過ぎ、不規則な睡眠リズムなど生活習慣が原因であれば、改善するためのアドバイスを行い、補助的治療薬を処方します。
(文責:理事長 丹羽 直樹)