後頭部の頭痛|原因・対処法・危険なサインと受診目安
後頭部の頭痛は、筋肉の緊張から重大な疾患までさまざまな原因が考えられます。この記事では、後頭部の頭痛の主な原因と特徴、セルフケア、危険なサイン、受診の目安まで詳しく解説します。
後頭部の頭痛とは?よくある質問とポイントまとめ
- 後頭部の頭痛の主な原因は? 筋肉の緊張、後頭神経痛、片頭痛、くも膜下出血、椎骨動脈解離などがあります。
- どんな時に受診すべき? 突然の激しい痛み、吐き気やけいれん、意識障害などがある場合はすぐに受診しましょう。
- セルフケアで改善できる? 筋肉の緊張による頭痛はストレッチや姿勢改善で和らぐことがあります。
後頭部の頭痛の主な原因と特徴
筋肉の緊張(緊張型頭痛)
- ・長時間のデスクワークや不適切な姿勢で発生しやすい
- ・鈍い痛みや締め付け感が特徴
- ・ストレッチや温熱療法が有効
後頭神経痛
- ・首の筋肉の緊張などで神経が圧迫される
- ・ズキンと刺すような痛み、一瞬電気が走るような感覚
- ・片頭痛との関連も
片頭痛
- ・後頭部にも現れることがある
- ・吐き気やめまいを伴う場合も
- ・強い痛みが特徴
くも膜下出血
- ・突然・激しい頭痛(今まで経験したことのない痛み)
- ・吐き気、けいれん、意識障害を伴うことも
- ・命に関わるため即受診が必要
椎骨動脈解離
- ・首から後頭部にかけての強い痛み
- ・スポーツや首の動きがきっかけになることも
- ・早期の診断が重要
その他の原因
- ・帯状疱疹(皮膚の発疹を伴う)
- ・脳腫瘍、髄膜炎など(全身症状や神経症状に注意)
危険な頭痛の見分け方・すぐに受診すべきサイン
- ・突然、今までにない激しい痛み
- ・吐き気、嘔吐、けいれん、意識障害、手足の麻痺
- ・痛みがどんどん強くなる
- ・皮膚に発疹や水ぶくれがある
上記の症状がある場合は、自己判断せず速やかに専門医を受診してください。
後頭部頭痛のセルフケアと日常対策
ストレッチ・姿勢の改善
- ・首や肩のストレッチをこまめに行う
- ・長時間同じ姿勢を避け、適度に休憩を取る
- ・背筋を伸ばし、肩をリラックスさせる
温熱療法
- ・温かいタオルやカイロで首・肩を温める
- ・入浴で筋肉をほぐす
市販薬の使い方と注意点
- ・市販の鎮痛薬を一時的に使用するのはOK
- ・連用は避け、改善しない場合は医療機関へ
症例紹介:後頭部頭痛の具体例
可逆性脳血管攣縮症候群の症例
元々片頭痛のある30代の女性です。スポーツジムで筋トレーニングをしていた際、突然右の後頭部から首にかけて激痛が走りました。翌日になっても痛みが続いていたため、当院を受診しました。
MRA検査を見てみました。

右椎骨動脈(右の首から後頭部へ行く血管)に、くびれた部分と膨らんだ部分とがあります。この所見から、右椎骨動脈に生じた可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。
椎骨動脈解離の症例
元々片頭痛のある50代の女性です。朝起きた際に、左の首に強い痛みを感じました。 寝違えたかと思い、首を少し曲げたところ、痛みはさらに強くなりました。翌々日になっても痛みが続いていたため、当院を受診しました。
MRA検査を行いました。

左椎骨動脈(左の首から後頭部へ行く血管)が変形しています。
さらに、T1BB法(T1 black blood method)という特殊な撮像法を行いました。

白く写っている部分が、左椎骨動脈の内側にできた血栓を示します。椎骨動脈解離の進行過程において、血管壁に血栓ができます。そこで、この血栓を描き出せれば診断ができます。
参考
- 未破裂脳動脈瘤の自然経過に関する大規模研究の結果発表 – UCAS JAPAN 日本脳神経外科学会
- 後藤 淳, 脳動脈解離. 98:1311-1318, 2009.
- 森田 隆雄. 有廣 昇司, 鶴﨑 雄一郎, 坂井 翔建, 芳賀 整. Arterial spin labeling法による頭部MR灌流画像で血行動態を評価した 頸部内頸動脈攣縮症の1例. 臨床神経 2022 May;62(3):178-183.
- Jérôme Mawet, Stéphanie Debette, Marie-Germaine Bousser, Anne Ducros. The Link Between Migraine, Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome and Cervical Artery Dissection. Ann Neurol. 2010 May;67(5):648-56.
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設