後頭部の頭痛|原因・対処法・危険なサインと受診目安
後頭部の頭痛は多くの人が経験しますが、原因は筋肉の緊張から命に関わる病気まで幅広く存在します。この記事では、後頭部頭痛の主な原因や特徴、セルフケア、危険なサイン、受診の目安まで、専門医監修で詳しく解説します。
後頭部の頭痛とは?よくある疑問Q&A
後頭部頭痛で検索する方が知りたい「本当に危険な症状は?」「どう対処すればいい?」など、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。
Q1. 後頭部の頭痛はどんな病気が考えられますか?
A1. 緊張型頭痛や後頭神経痛、片頭痛などの一次性頭痛が多いですが、くも膜下出血や椎骨動脈解離、脳腫瘍、髄膜炎など命に関わる病気が原因となる事もあります。痛みの性質や他の症状(意識状態・吐き気・麻痺など)をよく観察しましょう。
Q2. どんな症状があると危険ですか?
A2. 突然の激しい痛み、今までにない痛み、吐き気や嘔吐、けいれん、意識障害、手足のしびれや麻痺、言葉の障害を伴う場合は、重大な疾患が隠れている可能性があります。速やかに医療機関を受診してください。
Q3. 市販薬で様子を見ても大丈夫な頭痛は?
A3. 軽い痛みや、ストレスや姿勢の悪さなど思い当たる原因がある場合は、市販の鎮痛薬やストレッチ、温めるなどのセルフケアで様子を見ても良いでしょう。ただし、痛みが長引く場合や頻度・強さが増す場合は早めに医療機関を受診しましょう。
Q4. 後頭部の頭痛を予防するにはどうしたらいいですか?
A4. 長時間同じ姿勢を避け、こまめに首や肩を動かす事、姿勢を正す事、ストレスを溜めない事が予防につながります。充分な睡眠や適度な運動も効果的です。
Q5. 後頭部の頭痛は何科を受診すればいいですか?
A5. 頭痛外来や脳神経内科の受診が適しています。症状が重い場合や急を要する場合は、救急外来を受診してください。
Q6. 後頭部の頭痛が1週間以上続いていますが大丈夫ですか?
A6. 1週間以上続く頭痛は、重大な疾患が隠れている可能性もあるため、自己判断せず医療機関を受診しましょう。特に症状が悪化したり、他の症状を伴う場合は早めの受診が重要です。
後頭部の頭痛の主な原因と特徴
- 筋肉の緊張(緊張型頭痛) 長時間のデスクワークや姿勢不良で発生。鈍い痛みや締め付け感が特徴。ストレッチや温熱療法が有効です。
- 後頭神経痛 首や肩の筋肉の緊張で神経が圧迫される。ズキンと刺すような痛みや電気が走る感覚。片側だけに起こる事が多いです。
- 片頭痛 後頭部にも現れる事があり、吐き気やめまいを伴うことも。強い痛みが特徴。
- くも膜下出血 突然・激しい頭痛(今まで経験したことのない痛み)。吐き気やけいれん、意識障害を伴うことも。命に関わるため即受診が必要。
- 椎骨動脈解離 首から後頭部にかけての強い痛み。スポーツや首の動きがきっかけになる事も。早期の診断が重要。
- その他の原因 脳腫瘍、髄膜炎など(全身症状や神経症状に注意)。
危険な頭痛の見分け方・すぐに受診すべきサイン
- ・突然、今までにない激しい痛み
- ・吐き気、嘔吐、けいれん、意識障害、手足の麻痺、言葉の障害
- ・痛みがどんどん強くなる
上記の症状がある場合は、自己判断せず速やかに専門医を受診してください。
後頭部頭痛のセルフケアと日常対策
- ストレッチ・姿勢の改善 首や肩のストレッチをこまめに行い、長時間同じ姿勢を避ける。背筋を伸ばし、肩をリラックスさせる事も大切です。
- 温熱療法 温かいタオルやカイロで首・肩を温めたり、入浴で筋肉をほぐしましょう。
- 市販薬の使い方と注意点 市販の鎮痛薬を一時的に使用するのはOKですが、連用は避け、改善しない場合は医療機関へ相談しましょう。
受診の目安と医療機関での対応
- ・突然の激しい痛みや神経症状がある場合は、すぐに脳神経内科や救急外来へ
- ・軽度でも1週間以上続く場合や、痛みが増す場合は早めに受診を
- ・医療機関では、問診・診察・画像検査(MRI/MRAなど)を行い、必要に応じて薬物療法などの治療を行います
症例紹介:後頭部頭痛の具体例
可逆性脳血管攣縮症候群の症例
元々片頭痛のある30代の女性です。スポーツジムで筋トレーニングをしていた際、突然右の後頭部から首にかけて激痛が走りました。翌日になっても痛みが続いていたため、当院を受診しました。
MRA検査を見てみました。

右椎骨動脈(右の首から後頭部へ行く血管)に、くびれた部分と膨らんだ部分とがあります。この所見から、右椎骨動脈に生じた可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。
椎骨動脈解離の症例
元々片頭痛のある50代の女性です。朝起きた際に、左の首に強い痛みを感じました。 寝違えたかと思い、首を少し曲げたところ、痛みはさらに強くなりました。翌々日になっても痛みが続いていたため、当院を受診しました。
MRA検査を行いました。

左椎骨動脈(左の首から後頭部へ行く血管)が変形しています。
さらに、T1BB法(T1 black blood method)という特殊な撮像法を行いました。

白く写っている部分が、左椎骨動脈の内側にできた血栓を示します。椎骨動脈解離の進行過程において、血管壁に血栓ができます。そこで、この血栓を描き出せれば診断ができます。
まとめ
後頭部頭痛は原因によって対処法が異なります。危険なサインを見逃さず、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。セルフケアで改善する場合も、無理せず専門医に相談する事が大切です。
参考文献
- 未破裂脳動脈瘤の自然経過に関する大規模研究の結果発表 – UCAS JAPAN 日本脳神経外科学会
- 後藤 淳, 脳動脈解離. 98:1311-1318, 2009.
- 森田 隆雄. 有廣 昇司, 鶴﨑 雄一郎, 坂井 翔建, 芳賀 整. Arterial spin labeling法による頭部MR灌流画像で血行動態を評価した 頸部内頸動脈攣縮症の1例. 臨床神経 2022 May;62(3):178-183.
- Jérôme Mawet, Stéphanie Debette, Marie-Germaine Bousser, Anne Ducros. The Link Between Migraine, Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome and Cervical Artery Dissection. Ann Neurol. 2010 May;67(5):648-56.
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設

