頭痛と関係なく見つかった病気

頭痛外来の診療では問診や患者さんを前にしての診察が大事ですが、症状に表れない病気が見つかる見つかる事もあります。

症例

10年来頭痛持ちの30代後半の男性です。ほぼ毎年春頃になると、右眼の奥がえぐられるように痛くなり、断続的に1-2ヶ月続くという状況でした。頭痛と同時に、痛い方の右側だけ涙と鼻水が出るという症状で、夜寝ている時も激しい痛みで目が覚めてしまう状態でした。インターネットで調べたところ、群発頭痛に症状が当てはまると思い横浜脳神経内科を受診しました。

症状の特徴から群発頭痛と診断しましたが、頭部MRI検査を希望されたので施行しました。

巨大未破裂脳動脈瘤

MRA(MRIを使った脳血管の撮像)を見たところ、右側の中大脳動脈という血管に直径約5cmの巨大脳動脈瘤が見つかりました。

脳動脈瘤は脳の動脈の一部がコブのように膨らんだもので、血管の壁が薄くなっているため破れやすくなっています。破裂した場合、くも膜下出血という非常に危険な状態となります。

脳動脈瘤破裂

くも膜というのは、頭蓋骨とその内側の硬膜という固い膜のさらに内側にある薄い膜で、くもの巣のように見えるのでそう呼ばれています。

クモ膜下出血

くも膜下腔という脳の表面全体に出血が拡がり、頭蓋骨内部の圧力(脳圧)が急激に上昇するため脳が圧迫され、突然死もあり得る病気です。

発見された脳動脈瘤の場所は、たまたま右眼の裏側あたりですが、今回の右側の頭痛とは関係ありません。受診した時の症状はあくまで群発頭痛であり、まだ破裂していない状態なので頭痛の原因とはなりません。

頭部の断層画像でも、今回出血した形跡はありませんでした。

クモ膜下腔

直ちに手術の必要な状態であり、血圧を下げる薬を処方し、入院のできる脳神経外科を受診していただきました。

このような、破裂してくも膜下出血を起こす前の未破裂脳動脈瘤が、その後どんな経過をたどるかについて、2012年に我が国の大規模な調査が発表されています。1) この調査によると、破裂率は年間年0.95%であり、脳動脈瘤のできた場所や大きさ、形状などが破裂率を左右するとの事です。2)

文献

  1. The UCAS Japan Investigators. The Natural Course of Unruptured Cerebral Aneurysms in a Japanese Cohort. N Engl J Med 2012; 366:2474-2482.
  2. 未破裂脳動脈瘤疾患情報ページ. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020 Apr 15;20(5):9.

(文責:理事長 丹羽 直樹

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