頭痛の場所が移動する場合があります。
症例
元々片頭痛などはなかった30代の女性です。
ある日の朝後頭部の痛みを感じ、しばらくすれば治るだろうと思い様子を見ていました。しかし、なかなか頭痛は取れませんでした。市販の鎮痛薬を買って飲みましたが、ほとんど効きませんでした。さらに、立ちくらみもあり、歩こうとするとふらつきを感じました。
翌日も軽い痛みは続いており、落とした物を拾おうとしたところ痛みは強くなり、今度は頭頂部の強い痛みが出現しました。
その後も1週間断続的に頭痛が続き、目の奥やこめかみも痛くなってきました。
発症10日目に当院を受診、頭部MRI検査を行いました。
後大脳動脈(後頭部から上へ向かう血管)という血管が、所々細くなっています。
中大脳動脈(側頭部から頭頂部へ向かう血管)にも、同様の所見が見られました。
こうした画像所見から、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。この疾患では、様々な場所の脳血管が縮んで細くなる多発性分節性狭窄1)という特徴があります。また、進行とともに血管の先端部から中心部に攣縮が移動する求心性移行2)という経過をとる事などから、頭痛の場所が移動する事があります。
また、片頭痛でもいつも同じ場所が痛むとは限りません。痛みの場所が移動する場合があります。
患者さんへのアドバイス
可逆性脳血管攣縮症候群は、片頭痛の1つの形態でもあります。脳血管の収縮には、セロトニンという脳内伝達物質が関係します。
セロトニンは精神的ストレスで増加するため、心身共にリラクゼーションをはかる事が大事です。したがって、熱中できる趣味を持ったり、軽い運動を行う事が有効と思われます。
当院では、アロマセラピーと組み合わせたヨガ教室を開いています。薬だけが治療ではありませんので、ご希望の方はお申し出ください。
文献
- 竹丸 誠, 竹島 慎一, 原 直之, 姫野 隆洋, 志賀 裕二, 竹下 潤, 高松 和弘, 野村 栄一, 下江 豊, 栗山 勝. 可逆性脳血管攣縮症候群11症例の臨床的検討. 臨床神経 2018;58:377-384.
- M. Shimoda, S. Oda, A. Hirayama, M. Imai, F. Komatsu, K. Hoshikawa, H. Shigematsu, J. Nishiyama, T. Osada. Centripetal Propagation of Vasoconstriction at the Time of Headache Resolution in Patients with Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome. Am J Neuroradiol. 2016 Sep; 37(9): 1594–1598.
(文責:理事長 丹羽 直樹)