低気圧による頭痛の原因と対策|セルフチェックと今すぐできる予防法
「天気が悪くなると頭が痛い…」 そんな悩みを抱える方は少なくありません。この記事では、低気圧頭痛の仕組みや特徴、セルフチェック方法、すぐに実践できる予防・対策まで、専門的な知識を分かりやすく解説します。 不安を和らげ、前向きに日常を過ごせるヒントをお伝えします。
低気圧頭痛とは?
低気圧頭痛は、天気や気圧の変化に伴って起こる頭痛です。特に雨の日や台風の前後などに症状が現れやすく、自律神経の乱れや体内の水分バランスが関係していると考えられています。
低気圧に関連する症状
頭痛の特徴
- ・ズキズキする痛みや重だるさ
- ・天気の変化と症状が連動する
- ・めまいや吐き気、眠気を伴う事もある
- ・市販薬が効きにくい場合もある
≈頭痛以外の症状
- ・肩こり、首の痛み:首から肩にかけて重りが乗っているような感じ。
- ・耳の痛み:耳の奥がキーンと鋭く痛む。
- ・耳鳴り:耳の奥でツーと音が鳴る感じ。
- ・体のだるさ、倦怠感:体が重くて、何となくやる気が出ない。
- ・気分の落ち込み、イライラ
- ・むくみ
- ・関節痛:気圧が下がると手足の関節や腰が痛くなる。
- ・下痢
低気圧が頭痛を引き起こすメカニズム
1. 自律神経系の変化
耳の奥の内耳に気圧センサーがあり、気圧変化を感じると脳に信号を送ります。すると、脳は「これから天気が荒れるかもしれないから気を付けよ!」と指令を送って交感神経系が優位な状態となります。すると、血管が収縮して首や肩の血流が悪くなり肩こりや首の痛みをきたします。次に、反動で副交感神経系が優位となり、脳血管の拡張をきたし、血管に分布する三叉神経を刺激して痛みを生じます。つまり、このような流れで片頭痛を起こす事が多いです。1)2)
片頭痛の原因と仕組みをご参照ください。
2. 脳のむくみ
低気圧の状態では、体外の圧と体内の圧に差が生じるため、体は膨らむよう変化します。すると、細胞間に水分が貯まりやすくなり、血液から浸み出た水分が貯まってむくんだ状態となります。

脳の内部でも同様にむくみが生じますが、周りを頭蓋骨で囲まれているため膨らむ事はできず、内部の圧力(脳圧)が上昇した状態になります。その結果、脳圧が硬膜に分布する三叉神経を圧迫して頭痛を生じます。

低気圧の影響を受けやすい人
片頭痛を持つ人は、低気圧の影響を受けやすい事が知られています。片頭痛は女性ホルモンの影響を受けるため女性に多く、低気圧頭痛も女性が多くなります。また、低気圧頭痛は自律神経系のアンバランスが関係するため、生活環境の変化やストレスに弱い人ほど影響を受けやすくなります。
生活習慣改善による低気圧頭痛の対策
自律神経系のアンバランスに対する対策となります。
交感・副交感神経のバランスを保つために、以下の事が役立ちます。
- ・気圧調整機能付き耳栓:鼓膜にかかる気圧変化を和らげる。
- ・耳のマッサージ:両耳をつかんで上下左右に10秒ずつ動かす。内耳の血流改善により自律神経を安定化。
- ・入浴:ぬるめのお湯に10分ほど浸かる事で副交感神経が優位となり有効。
- ・ストレッチ:ヨガがリラクゼーションに有効。
- ・充分な睡眠と規則正しい生活:睡眠の質を保つ事が有効。
また、片頭痛の悪化要因を避ける事が大事です。以下をご参照ください。
食べ物でできる低気圧頭痛の対策
片頭痛を悪化させる物を避け、予防になる物を摂りましょう。
悪化させる可能性がある食品とその成分:
- ・チーズ(チラミン)
- ・チョコレート(チラミン)
- ・赤ワイン(ヒスタミン、亜硝酸塩、アルコール)
- ・着色されたハムやソーセージ(亜硝酸塩)
- ・インスタント麺や中華料理の素(グルタミン酸ナトリウム)
これらは、脳血管を拡張して片頭痛を誘発します。チーズやハムの入ったピザやグラタン、チョコレートケーキ、ワインを使った煮込み料理などは避けたいものです。
予防になる食べ物:
- ・マグネシウムを含む食材(海藻、大豆製品、玄米、ほうれん草)
- ・ビタミンB2を含む食材(海苔、ワカメ、魚、大豆製品、玄米、ほうれん草)
- ・ビタミンD(魚、干し椎茸)
マグネシウムは脳血管を柔らかくする作用、ビタミン類は脳の神経伝達物質を整える作用を持ちます。納豆とワカメの味噌汁、ほうれん草のごま和えなどがお勧めです。
また、カフェインはコーヒー1日1-2杯程度の少量であれば、鎮痛作用と血管収縮作用があり有効です。ただし、それ以上の量になると、カフェイン離脱頭痛を起こす事があるため逆効果です。
痛みがひどいときの応急処置と医師に相談すべきタイミング
- ・静かな場所で安静にする
- ・痛む側の首を冷やす
- ・市販薬を服用する(用法用量を守る)
次のような場合は医師に相談しましょう:
- ・頭痛が長引く・頻繁に起こる
- ・激しい痛みや意識障害を伴う
- ・吐き気や視覚障害がある
薬による低気圧頭痛の治療
脳のむくみを取る薬や鎮痛剤が有効です。
- ・五苓散:
- 体内の水分バランスを整えることで、頭痛を和らげることが期待できます。雨が降る前や頭痛の前兆を感じた時に服用すると効果的です。
- ・ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどの鎮痛剤:痛みを感じだした時に服用すると有効です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 低気圧頭痛はどんな人がなりやすいですか?
A1. 気象の変化に敏感な方や、もともと片頭痛持ちの方、自律神経が乱れやすい方がなりやすい傾向があります。女性やストレスを感じやすい方も注意が必要です。
Q2. 低気圧頭痛と他の頭痛の違いは?
A2. 低気圧頭痛は天気や気圧の変化と連動して発症します。気象の変化がない時は症状が出にくいのが特徴です。
Q3. 低気圧頭痛は薬で治せますか?
A3. 市販の頭痛薬で症状が和らぐ事もありますが、根本的な予防には生活習慣の見直しが大切です。重い症状や頻繁な場合は医師に相談しましょう。
Q4. 日常生活で気をつけるポイントは?
A4. 規則正しい生活、充分な睡眠、バランスの良い食事、ストレスケアが大切です。気圧の変化をアプリなどで把握し、体調管理に役立てましょう。
Q5. 低気圧頭痛を予防する食べ物はありますか?
A5. マグネシウムやビタミンB群を含む食品(ナッツ類、魚、豆類など)が自律神経の安定に役立つとされています。
Q6. 子どもや高齢者も低気圧頭痛になりますか?
A6. 年齢に関係なく発症しますが、個人差があります。子どもや高齢者の場合も、症状が続くときは医師に相談しましょう。
まとめ
低気圧頭痛はつらいものですが、原因や対策を知ることでコントロールしやすくなります。「自分だけじゃない」「対策できる」と知る事で、少しでも安心して日々を過ごせる事を願っています。
参考
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設

