夜中に頭痛で目が覚める

夜中に頭痛で目が覚める原因には、いくつかの可能性が考えられます。

夜中に頭痛で目が覚める

 

 

睡眠時頭痛

睡眠中のみに、頻繁に繰り返し起こる頭痛です。そして、別名「目覚まし時計頭痛」(alarm clock headache)1)とも言われ、15分から4時間続くとされています。

しかし、原因はまだ充分には分かっておらず、脳の視床下部の機能異常2)ではないかと考えられています。

診断基準として

  • 1. 睡眠中にのみ頭痛発作が起こり、覚醒の原因となる。
  • 2. 月に10日以上、3ヶ月を超えて起こる。
  • 3. 覚醒後15分以上、4時間まで持続する。
  • 4. 頭部自律神経症状や落ち着きのなさを認めない。

(4. は群発頭痛との鑑別診断上必要となります)

治療にはカフェインやインドメタシンなどの薬が用いられます。

当院の経験では、睡眠時頭痛と特定できた症例はなく、調べてみたら他の疾患だった場合が多くを占めています。

 

睡眠時無呼吸性頭痛

睡眠時無呼吸症候群3)という疾患があります。睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態で、いびきが多く熟睡できないため、日中眠気が襲ってくる症状が特徴です。さらに、集中力や注意力の低下をきたします。

脳の血管は血液中の酸素が多いか二酸化炭素が少ないと収縮し、逆の場合には拡張します。つまり、片頭痛や群発頭痛の発作時に酸素を吸ったり過呼吸を行うと血管が収縮して痛みが軽くなります。

睡眠時無呼吸症候群では、夜間睡眠中に血液中の酸素濃度が減って二酸化炭素濃度が上昇し、明け方や朝目が覚めた時に頭痛を生じます。そして、元々片頭痛のある場合はさらに悪化する事となります。

 

可逆性脳血管攣縮症候群

可逆性脳血管攣縮症候群とは、雷鳴頭痛と表現される「急に頭の中で雷が鳴ったかのような激しい頭痛」で発症します。さらに、吐き気やめまいを伴う事もあります。そして、その後も断続的に痛みが続くようになります。

頭部MRA検査(MRIを用いた血管撮影)を撮ると、

 

夜中に頭痛で目が覚める

 

このように、脳の血管が所々で収縮して細くなっている状態が観察されます。まれに脳梗塞やくも膜下出血を合併する事があります。

可逆性脳血管攣縮症候群の発症には、何らかのトリガーとなる誘発要因があります。

  • ・入浴やシャワー
  • ・排便
  • ・性交
  • ・咳やくしゃみ
  • ・潜水やダイビング
  • ・興奮や大声
  • ・息を止めて力を入れる動作
  • ・精神的ストレス
  • ・血管作働性薬物
  • ・急性副鼻腔炎のような頭蓋内の炎症
  • ・女性ホルモンの変化

 

その痛さは、夜中に頭痛で目が覚める位痛いとされています。さらに、最初の誘発要因が加わる度に頭痛は強くなります。

 

群発頭痛

夜眠った後や明け方に、あまりの激痛で目が覚めてしまうのが群発頭痛4)です。

群発頭痛の特徴は、

  • ・左右いずれかの目の奥のえぐられるような強い痛み
  • ・痛みと同じ側の目の充血や涙、眼瞼の浮腫み
  • ・痛みと同じ側の鼻水や鼻づまり
  • ・痛みと同じ側の発汗

となります。

群発頭痛も片頭痛と同様に脳血管が拡張して痛みを生じますが、眼動脈という血管に限定されます。そして、血管の炎症と浮腫みが加わります。したがって、片頭痛と同じトリプタンやベラパミルの他、炎症を抑えるためにステロイドホルモンが用いられます。

また、睡眠時無呼吸性頭痛で述べたように、酸素吸入で脳血管が収縮する事から、在宅酸素療法5)も行われています。

患者さんへのアドバイス

睡眠時無呼吸性頭痛の場合

元になる睡眠時無呼吸症候群の適切な治療が第一です。自分でできる事として、良質な睡眠を確保するために日中適度な運動を行うようお勧めします。

可逆性脳血管攣縮症候群の場合

可逆性脳血管攣縮症候群は、一般に交感神経系の過剰反応で起きる傾向があります。したがって、逆に副交感神経系を優位にする事が予防になります。つまり、怒って大声を出したりストレスを貯める事のないような、リラックスした生活スタイルが大事です。

群発頭痛の場合

群発頭痛では、アルコールや体温上昇が悪化要因となります。したがって、群発期には飲酒や激しい運動は控えるようにしましょう。

 

夜中に頭痛で目が覚めると、日常生活に大きな支障をきたします。お困りの方はご相談ください。

 

参考

  1. Neurology Consultants Medical Group, Whittier, CA. “Alarm Clock” Headaches
  2. Hypnic headache – The Migraine Trust
  3. 睡眠時無呼吸症候群 – 千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学
  4. 群発頭痛 – 日本頭痛学会
  5. 群発頭痛の在宅酸素療法(HOT)ガイドライン – 日本頭痛学会

 

(文責:理事長 丹羽 直樹

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