風邪で頭痛だけ治らない原因について説明します。

髄膜炎
風邪症状の後に強い頭痛が1週間以上続く場合、特に注意が必要です。髄膜炎はウイルスや細菌、真菌などが脳の周りの髄膜に炎症を起こす病気です。

症状は以下の通りです。
- ・高熱
- ・頭を動かしたり振ったりすると痛みが強い
- ・首の痛みや硬さ
- ・吐き気や嘔吐
- ・意識の障害
- ・けいれん
特に、細菌性髄膜炎は致死率が約20%と高く、また、助かったとしても重い後遺症が残る事があります。1)2)したがって、風邪で頭痛だけ治らない場合、最も危険な病気と言えるでしょう。
風邪が治ったと思った1週間後から、熱とともに首が動かしづらくなり、強い頭痛が続く場合は注意が必要です。
副鼻腔炎
風邪の後に副鼻腔に炎症が残り、頭痛や顔面痛を生じる事があります。特に、前頭部や頬の痛み、鼻づまり、鼻水などを伴う事が多いです。風邪が治ったように見えても、副鼻腔の炎症だけが長引く場合があります。3)
朝起きた時に額や頬がズーンと重く、鼻をかむと黄色い鼻水が出る場合は副鼻腔炎の可能性があります。
中耳炎
風邪の後に中耳に炎症が残り、頭痛と耳の痛み、さらに、聴力低下を起こす事があります。4)
可逆性脳血管攣縮症候群
脳動脈の過剰な収縮で起こる強い頭痛で、後頭部や頭全体の痛みの事が多い傾向があります。また、風邪の症状としての咳やくしゃみが誘因となる事があります。さらに、脳梗塞を合併したり、くも膜下出血を合併したりする事もあります。
医療機関を受診すべき目安
以下のような場合、早めに専門医を受診することをお勧めします。
- ・風邪と診断された後も頭痛が4日以上続く場合
- ・頭痛が強くなったり、性質が変わったりする場合
- ・今までに経験したことのないような激しい頭痛
- ・突然発症した強い頭痛(特に後頭部から首にかけて広がる痛み)
- ・意識障害、吐き気・嘔吐、発熱、首の硬さがある
- ・視力障害や言語障害がある
風邪で頭痛だけ治らない場合、何らかの重大な疾患の可能性を考える必要があります。頭痛外来または脳神経内科を受診するようお勧めします。
よくある質問(Q&A)
Q1. 市販薬だけで治りますか?
A1. 一時的に頭痛が和らぐ事はありますが、長引く場合や症状が強い場合は市販薬だけに頼らず、医療機関を受診しましょう。特に、頭痛の性質が変わったり、他の症状を伴う場合は注意が必要です。
Q2. 子どもや高齢者の場合はどうしたらいいですか?
A2. 子どもや高齢者は症状が重症化しやすい傾向があります。頭痛が長引く、普段と様子が違う、他の症状(嘔吐・意識障害など)がある場合は、早めに受診しましょう。
Q3. 頭痛以外の症状が出た場合は?
A3. 吐き気や嘔吐、意識障害、手足のしびれ、視覚・言語障害などが出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。重篤な疾患の可能性があります。
Q4. 頭痛が何日続いたら受診すべきですか?
A4. 一般的な風邪後の頭痛は数日で改善する事が多いですが、4日以上続く場合や、痛みが強くなる・性質が変わる場合は受診をお勧めします。
Q5. 風邪薬や頭痛薬を長期間使っても大丈夫ですか?
A5. 頭痛薬の連用は「薬物乱用頭痛」を引き起こす事があります。市販薬は短期間・用法を守って使い、改善しない場合は医師に相談しましょう。
参考
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設
