群発頭痛とは?症状・原因・治療法を専門医が解説
群発頭痛は「人生最悪の痛み」とも言われるほど激烈な頭痛です。この記事では、症状・原因・治療法から日常生活での注意点、よくある疑問まで、専門医監修で詳しく解説します。
群発頭痛の基本情報・片頭痛との違い
群発頭痛は、片側の眼の奥に強くえぐられるような激痛を生じます。男性に多く、20-40代で発症しやすいのが特徴です。痛みが強すぎて、じっとしていられず部屋の中を歩き回ったり、頭を抱えてうずくまったりする患者さんも多いです。片頭痛との違いも説明します。
| 比較項目 | 片頭痛(Migraine) | 群発頭痛(Cluster Headache) |
|---|---|---|
| 発症年齢・性別 | 思春期〜40代に多く、女性に多い(約3〜4倍) | 20〜40代に多く、男性に多い(約5〜7倍) |
| 痛みの部位 | 片側(ときに両側)のこめかみ・眼の奥など | 片側の眼の奥や目の周囲、こめかみ |
| 痛みの性質 | ズキズキ・拍動性 | えぐられるような激痛、焼けるような痛み |
| 痛みの強さ | 中等度〜強い(生活に支障) | 非常に強い(耐え難い痛み) |
| 発作の持続時間 | 4〜72時間 | 15分〜3時間程度 |
| 発作の頻度 | 月に数回〜数十回 | 1日に1〜8回、数週間〜数か月続く、群発期に集中 |
| 随伴症状 | 吐き気、嘔吐、光過敏、音過敏、閃輝暗点(前兆)など | 涙、鼻水、鼻づまり、眼瞼下垂、発汗など(自律神経症状) |
| 発作の誘因 | ストレス・睡眠不足・月経・天候変化・特定の食品など | アルコール、喫煙、昼寝、季節の変わり目(春・秋) |
| 行動時の特徴 | 安静を好む(暗い部屋で休む) | じっとしていられず、歩き回ることが多い |
| 治療法(急性期) | トリプタン製剤、NSAIDs(鎮痛薬) | トリプタン皮下注射・点鼻、酸素吸入 |
| 予防療法 | β遮断薬、抗てんかん薬、カルシウム拮抗薬など | ベラパミル(Ca拮抗薬)、ステロイドなど |
| 原因・機序 | 三叉神経血管系の過剰興奮と血管拡張 | 視床下部の異常と自律神経の関与、血管拡張 |
主な症状・発作パターン
- ・片側の眼の奥の激痛
- ・涙や鼻水、眼瞼下垂などの随伴症状
- ・夜間から明け方に多発
- ・群発期(1~2ヶ月)に集中して発作
- ・発作は1回15分~3時間
セルフチェックリスト 以下に当てはまる場合は群発頭痛の可能性があります。
- ・これまで経験したことのない激しい頭痛
- ・片側の眼の奥に強い痛みが繰り返し起こる
- ・涙や鼻水を伴う
- ・市販薬で改善しない
群発頭痛の原因とメカニズム
まだ完全には解明されていませんが、以下の説が提唱されています。
- ・視床下部(体内時計)の異常
- ・三叉神経や内頚動脈の炎症・拡張
- ・神経伝達物資の変化による自律神経系の異常
診断基準と危険信号
群発頭痛は問診と症状から診断されます。下記の「危険信号」があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
- ・今までで最悪の頭痛
- ・発熱や意識障害、麻痺を伴う
- ・突然の激しい頭痛
治療法・対処法
- ・急性期治療:スマトリプタン皮下注射、酸素吸入
- ・予防療法:ベラパミル、ステロイド等(医師と相談)
- ・効果が期待できない薬:市販鎮痛薬、経口薬
発作の予兆を感じたら、早めの服薬・対処が重要です。
群発頭痛と日常生活の工夫・注意点
群発頭痛は脳血管の拡張で起きる事から、脳血流が増えるような事は避ける事が大事です。
- ・群発期中はアルコール厳禁
- ・激しい運動や熱いお風呂も控える
- ・気圧変化(飛行機・ダイビング等)にも注意
また、自律神経系の不調が関係する事から、交感・副交感神経系に影響を与える事は避けた方が良いでしょう。規則正しい生活、睡眠環境を整えて充分な睡眠の確保、リラクゼーションなどが大事です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 群発頭痛はどのくらい痛い?
A1. 「人生最悪の痛み」と言われ、10段階で8-10レベルの激痛です。
Q2. 群発頭痛は治る?
A2. 完治は難しいですが、治療で発作を大幅に軽減できます。
Q3. 遺伝する?
A3. 明確な遺伝性は証明されていませんが、家族歴がある場合はリスクがやや高いです。
Q4. 群発期はどれくらい続く?
A4. 1~2ヶ月の群発期が多く、発作は1回15分~3時間。群発期後は寛解期に入ります。
Q5. 普段の生活で気をつける事は?
A5. 規則正しい生活、アルコール・激しい運動を控える、ストレス管理が重要です。
まとめ・早期受診のすすめ
群発頭痛は適切な診断と治療で症状の軽減が可能です。激しい頭痛が繰り返し起こる場合は、早めに頭痛専門医に相談しましょう。
参考文献
- ・群発頭痛 – 日本頭痛学会/a>
- ・Ⅳ. 群発頭痛 Cluster headache – 日本神経学会
- ・International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3)
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設


