群発頭痛とは – 激痛の特徴と症状
頭痛専門医が解説する群発頭痛の症状・原因・治療法
監修:丹羽直樹(神経内科専門医・頭痛専門医)
最終更新:2024年1月
群発頭痛の基本情報

群発頭痛は、片側の眼の奥に「アイスピックで刺されるような」激しい痛みが現れる頭痛です。
男性に4倍多く、20-40代に好発し、一定期間に集中して発作を繰り返すのが特徴です。
重要ポイント
- 1回の発作時間:15分〜3時間
- 群発期間:1〜2ヶ月
- 発生頻度:年1〜2回の周期
- 痛みレベル:★★★★★(最重度)
群発頭痛の症状チェックリスト
必須症状
片側の眼の奥〜こめかみの激痛(10段階で8〜10レベル)
じっとしていられない程の痛み(動き回りたくなる)
よくある随伴症状
同側の涙・目の充血
まぶたの腫れ・下垂
鼻水・鼻づまり
顔面発汗
発作パターン
夜間〜明け方に多発
同じ時間帯に起こりやすい
アルコール摂取で誘発
群発頭痛が起こる3つのメカニズム
1. 体内時計の乱れ(視床下部)
- 主原因:脳の視床下部にある生物時計の異常
- 証拠:発作が同じ時間帯に集中
- 誘発因子:睡眠不足、時差ボケ、季節の変わり目
2. 血管系の変化
- 三叉血管系の炎症
- 内頚動脈周囲の血管拡張
- CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の放出
3. 自律神経の乱れ
- 交感神経機能低下
- 副交感神経過活動
- 涙腺・鼻腺への影響
群発頭痛の診断基準と他の頭痛との鑑別
国際頭痛分類による診断基準
項目 | 群発頭痛 | 片頭痛 | 緊張型頭痛 |
---|---|---|---|
痛みの性質 | 刺すような激痛 | 拍動性 | 締め付け感 |
痛みの部位 | 片側眼奥 | 片側〜両側 | 両側頭部 |
発作中の行動 | 動き回る | 安静を好む | 日常生活可能 |
持続時間 | 15分〜3時間 | 4〜72時間 | 30分〜7日 |
自律神経症状 | あり(必発) | 時々あり | なし |
緊急受診が必要な「危険信号」
- これまでで最悪の頭痛
- 発熱・項部硬直を伴う
- 意識障害・麻痺を伴う
群発頭痛の治療法:急性期vs予防
急性期治療(発作時)
第一選択
1. 酸素吸入
- • 100%酸素、15L/分、15分間
- • 有効率:70-80%
- • 副作用:ほとんどなし
2. トリプタン製剤
- • スマトリプタン皮下注射(最も効果的)
- • ゾルミトリプタン点鼻薬
- • 効果発現:5-15分
効果が期待できない薬
- • 一般的な鎮痛薬(アセトアミノフェン、ロキソニンなど)
- • 経口薬全般(吸収が間に合わない)
予防治療(群発期全体)
薬剤名 | 使用量 | 効果発現 | 注意点 |
---|---|---|---|
ベラパミル | 240-480mg/日 | 1-2週間 | 心電図監視必要 |
プレドニゾロン | 40-60mg/日→漸減 | 数日 | 短期間のみ使用 |
リチウム | 600-900mg/日 | 1-2週間 | 血中濃度監視 |
群発頭痛の生活管理・予防法
群発期中の絶対禁止事項
アルコール摂取(最重要)
ニトログリセリン等の血管拡張薬
強い香り(香水、化学物質)
極端な温度変化
推奨される生活習慣
規則正しい睡眠(7-8時間固定)
ストレス管理(瞑想、軽い運動)
禁煙(喫煙者に多い傾向)
適度な有酸素運動(群発期以外)
発作予兆の早期対処法
1. 時間記録
発作時間のパターン把握
2. 環境調整
暗く静かな場所の確保
3. 酸素ボンベ
自宅での準備
4. 服薬タイミング
予兆時の即座投与
よくある質問(FAQ)
Q1: 群発頭痛はどのくらい痛いですか?
A1: 「人生最悪の痛み」「出産の痛みより辛い」と表現される程の激痛で、10段階評価で8-10レベルの痛みです。多くの患者さんが「今まで経験したことのない痛み」と表現されます。夜中に頭痛で目が覚めるほどの痛みです。
Q2: 群発頭痛は治りますか?
A2: 完治は難しいですが、適切な治療により発作の頻度や強度を大幅に軽減できます。70-80%の患者さんで症状改善が期待できます。早期診断・早期治療が重要です。
Q3: 群発頭痛は遺伝しますか?
A3: 明確な遺伝性は証明されていませんが、家族歴がある場合のリスクは一般より若干高い傾向があります。環境因子と遺伝的素因の複合的な要因と考えられています。
Q4: 発作はいつまで続きますか?
A4: 群発期は1~2ヶ月続くことが多く、発作自体は1回15分~3時間程度です。群発期が終わると数ヶ月から数年間は発作が起こらない寛解期に入ります。
Q5: 生活で気をつけることは?
A5: 飲酒や激しい運動を控え、規則正しい生活を心がけましょう。特に群発期中のアルコール摂取は絶対に避けてください。十分な睡眠とストレス管理も重要です。
まとめ
群発頭痛は激しい痛みが特徴的な疾患ですが、適切な診断と治療により症状の大幅な軽減が可能です。
片側の眼の奥に激痛が繰り返し起こる場合は、早めに頭痛専門医にご相談ください。
酸素吸入やトリプタン製剤による急性期治療と、ベラパミルなどによる予防治療を組み合わせることで、
多くの患者さんで良好な経過が期待できます。
受診のタイミング
- • これまでに経験したことのない激しい頭痛
- • 片側の眼の奥に強い痛みが繰り返し起こる
- • 市販薬で改善しない頭痛
- • 涙や鼻水を伴う一側性の頭痛
参考文献
この記事の監修医師
理事長 丹羽 直樹
資格
- • 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- • 日本頭痛学会専門医・指導医
- • 日本脳卒中学会専門医
- • 日本内科学会認定内科医
略歴
- • 1988年 千葉大学医学部卒業
- • 2002年 沼津市立病院 神経内科
- • 2012年 横浜脳神経内科開設