薬物乱用頭痛と慢性片頭痛は違うもの?
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の使い過ぎが原因で頭痛が慢性化した状態とされています。この記事では、慢性片頭痛との比較を通じて薬物乱用頭痛の症状や見分け方、治療・予防のポイント、慢性片頭痛との違いまで、専門医の視点から詳しく解説します。
主な症状とセルフチェックリスト
- ・頭痛が毎日または頻繁に起こる
- ・朝方や起床時に頭痛が強い
- ・以前より頭痛薬が効きにくい
- ・頭痛の性質や部位が日によって違う
| 比較項目 | 慢性片頭痛 (CM) | 薬物乱用頭痛 (MOH) |
|---|---|---|
| 頭痛の頻度 | 月に15日以上の状態が 3ヶ月以上続く | 月に15日以上の状態が 3ヶ月以上続く |
| 片頭痛の要件 | 月15日のうち、少なくとも8日は片頭痛の特徴を持つ | (特に規定なし) ※背景に片頭痛等があることが前提 |
| 薬剤の使用 | (特に規定なし) | 急性期薬を定期的かつ過剰に使用 |
| 「乱用」の目安 | ー | ・トリプタン等:10日/月以上 ・市販鎮痛薬等:15日/月以上 |
| 診断のポイント | 脳が「痛みモード」に固定され、過敏になっている。 | 薬の飲み過ぎで「痛みへの閾値」が下がり、悪循環に陥っている。 |
出典:国際頭痛分類第3版(ICHD-3)を元に作成
専門医による診断のポイント
臨床現場では、以下のステップに沿って診断・鑑別を行います。特に「二重診断(両方の基準を満たす)」となる患者さんが多いのが特徴です。
1. 頭痛カレンダーの分析
まず、単純に「頭が痛い日」が月に何日あるかを数えます。15日を超えている場合、それは「慢性片頭痛」の範疇に入ります。
2. 薬を飲んでいる日数のチェック
次に、1ヶ月に何回痛み止めを飲んでいるかを正確に把握します。市販薬(イブやロキソニン等)を「毎日飲まないと不安」という状態は、薬物乱用頭痛のリスクが非常に高いと言えます。
3. 片頭痛の特徴の有無
「強い光が眩しい」「吐き気がする」「ズキズキと脈打つ」といった片頭痛特有の症状が、月の半分以上(8日以上)あるかどうかを確認します。
💡 専門医からのアドバイス
薬物乱用頭痛を合併している場合、単に予防薬を飲むだけでは効果が出にくい事があります。まずは原因となっている薬剤を減らしつつ、適切な予防療法を組み合わせる事が、完治への近道です。
自分自身の頭痛がどちらに当てはまるか不安な場合は、頭痛専門医の在籍する頭痛外来への受診をお勧めします。
原因とリスク要因
薬物乱用頭痛の主な原因は「頭痛薬の使い過ぎ」です。特に以下の薬剤で起こりやすいとされています。
- ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)
- ・トリプタン製剤
- ・エルゴタミン製剤
- ・複合鎮痛薬(カフェイン入りなど)
リスクが高まるケース
- ・片頭痛や緊張型頭痛が元々ある
- ・市販薬を自己判断で長期間使用している
- ・頭痛が不安で予防的に薬を飲んでしまう
治療法と治療の流れ
- 原因薬剤の中止(急激にやめる方法と、徐々に減らす方法がある。医師の指導のもとで行う)
- 離脱症状の対処(中止後1~2週間は頭痛が悪化することがある。必要に応じて予防薬や補助療法を使用)
- 予防薬・補助療法(抗うつ薬や漢方薬など、頭痛の再発を防ぐ薬を使う場合も)
- 再発予防のポイント(自己判断による乱用を避け、定期的な医療機関でのフォローが大切)
予防と再発防止のためにできる事
- ・頭痛薬は必要最小限の回数にとどめる
- ・頭痛ダイアリーで自分の頭痛パターンを把握する
- ・規則正しい生活と充分な睡眠
- ・ストレス管理やデジタル機器の使い過ぎに注意
Q&A:よくある質問
Q1. 薬物乱用頭痛はどんな人に多いですか?
A1. 薬物乱用頭痛は、元々片頭痛や緊張型頭痛がある人に多く見られます。特に、市販薬や処方薬を自己判断で長期間・頻繁に使っている場合にリスクが高まります。
Q2. 薬物乱用頭痛と普通の頭痛はどう違いますか?
A2. 普通の頭痛は一時的な事が多いですが、薬物乱用頭痛は薬の使い過ぎによって頭痛が慢性化し、薬を飲んでも効きにくくなります。また、頭痛の頻度や性質が変化する事も特徴です。
Q3. どんな薬で薬物乱用頭痛が起こりやすいですか?
A3. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、トリプタン製剤、エルゴタミン製剤、市販の複合鎮痛薬(カフェイン入りなど)で起こりやすいとされています。
Q4. 薬物乱用頭痛はどうやって治しますか?
A4. 治療の基本は、原因となっている頭痛薬の使用を中止または減量する事です。急にやめる場合と徐々に減らす場合があり、医師の指導の基で行います。必要に応じて予防薬や補助療法も使います。
Q5. 薬物乱用頭痛は再発しますか?
A5. 薬物乱用頭痛は再発しやすい傾向があります。再発予防のためには、薬の使い方を見直し、頭痛ダイアリーで記録をつける事や、定期的に医療機関でフォローを受ける事が大切です。
Q6. 早めに受診した方がいいのはどんな時?
A6. 「頭痛薬を飲む回数が増えてきた」「薬が効きにくい」「頭痛が毎日のように続く」と感じたら、早めに専門医に相談しましょう。早期発見と治療が改善への近道です。
慢性片頭痛との関係・当院の見解
薬物乱用頭痛も慢性片頭痛も同様の基準となっています。
当院の経験では、実際には薬を中止後頭痛の頻度は多少減ったものの、強い頭痛はなくならないケースがあります。
鎮痛剤を飲まざるを得なくなった元々の頭痛は、いったいどういう頭痛なのでしょうか?元の頭痛が何かという考察が必要で、鎮痛剤を止めただけでは根本的解決になりません。
元々の頭痛の多くは片頭痛であり、慢性化した原因を突き止める必要があります。片頭痛を悪化させる様々な要因が分かっています。慢性片頭痛は、外部環境や生活習慣の問題により、脳内の痛みの伝達系に異常を生じている状態と考えられています。そもそも片頭痛ではない可能性も考える必要があります。
まず問診を正確に行い、片頭痛を悪化させている要因を明らかにする事が第一段階です。不安や精神的ストレスが片頭痛を悪化させている場合には、抗不安薬や抗うつ薬を用いたり、心療内科との連携をはかります。PCやスマートフォンの見過ぎ、不規則な睡眠リズムなど生活習慣が原因であれば、改善するためのアドバイスを行い、補助的治療薬を処方します。
まとめ
薬物乱用頭痛は、早期発見・適切な治療が大切です。「頭痛薬を飲む回数が増えてきた」「薬が効きにくい」と感じたら、自己判断せず早めに専門医にご相談ください。
参考文献
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設

