寝起きの頭痛

寝起きの頭痛|原因・対処法・受診の目安を専門医が解説

「朝起きた瞬間から頭がズキズキする…」そんな寝起きの頭痛には、片頭痛の場合もあれば、睡眠時無呼吸症候群や脳腫瘍といった治療が必要な病気が隠れている場合もあります。この記事では、専門医が寝起き頭痛の「危険なサイン」の見分け方と、受診の目安や対処法を解説します。

 

寝起きの頭痛

 


寝起きに頭痛が起きる主な原因

片頭痛

脳の血管が拡張して、多くはズキズキと脈打つ痛みをきたします。

片頭痛持ちの方の多くが「朝起きた瞬間が一番辛い」と感じるのには、医学的な理由があります。以下に片頭痛が寝起きに起きるメカニズムを示します。

① 血液中の二酸化炭素濃度の増加

人間は寝ている間、起きている時よりも呼吸が浅く、ゆっくりになります。すると、血液中の二酸化炭素の濃度がわずかに上昇します。
二酸化炭素には強力な脳血管拡張作用があるため、寝ている間は起きている時よりも、脳の血管が少し広がった状態が維持されます。1)

 

② セロトニンの過剰分泌

脳の中には体内時計があり、朝日を浴びることで脳内のセロトニン分泌がなされ昼のモードに切り替わります。片頭痛持ちの方では、ストレスや気圧の変化、起床時の刺激などがスイッチとなり、血液中の血小板からセロトニンが一時的に大量に放出されます。
セロトニンには血管を縮める作用があるため、この段階では脳の血管が収縮します。大量に出たセロトニンはすぐに体内で分解され、排泄されてしまいます。すると今度は血中のセロトニン濃度が急に下がり、収縮していた血管は反動で拡張します。2)

 

③ 低血糖と脱水

睡眠中は、長時間食事も水も摂りません。

  • 低血糖:睡眠中に血糖値が下がると、脳が危機状態と判断してアドレナリンが分泌されて交感神経優位となります。すると脳血管は収縮し、次にその反動で副交感神経優位となり脳血管は拡張します。3)
  • 脱水:水分不足で血液がドロドロになり脳の血液循環が悪化します。そこで、脳は少しでも血流を維持しようと脳血管を拡張します。4)

 

④ 夢を見ている時(レム睡眠)の血流増加

睡眠には、脳が休む「ノンレム睡眠」と、脳が活発に動いて夢を見る「レム睡眠」があります。
レム睡眠中、脳は覚醒時と同じくらいエネルギーを使っているため、酸素を届けるために脳血流が増え、血管が拡張します。明け方はこのレム睡眠の割合が増えるため、生理的に血管が広がった状態で目を覚ますことが多くなります。5)

これら①〜④が重なる「寝起き」は、最も片頭痛が起きやすいタイミングなのです。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間の無呼吸状態が多いために血液中の二酸化炭素が蓄積します。すると、朝起床時には生理的上昇以上に二酸化炭素濃度が増加するため、脳血管が拡張して片頭痛同様の頭痛をきたします。6)

いびきで熟睡できないため、起床時の頭痛以外に、日中の眠気や集中力低下なども生じます。

 

脳腫瘍

夜間就寝中の脳血管拡張のため頭蓋骨内部の容積は増加します。すると、脳腫瘍のような容積が増加する疾患では、さらに容積増加を生じて脳圧が上がって、起床時に頭痛をきたすことになります。

意識の変化や手足の麻痺、言葉の障害など、頭痛以外の症状がある場合は、脳腫瘍の可能性を考える必要があります。

 

【セルフチェック】その頭痛、どんな痛み?

痛みのタイプによって、疑われる原因が異なります。以下の表でチェックしてみましょう。

※痛みの特徴や経過を比較し、ご自身の症状に近いものを確認してください。

比較項目片頭痛睡眠時無呼吸 (SAS)脳腫瘍
痛みの質ズキズキと脈打つ痛み頭全体が重い・鈍痛鈍い痛み(徐々に増強)
頻度と経過発作的(週1〜数回)ほぼ毎朝起こる毎日続き、日ごとに悪化
起床後の変化数時間〜数日続く起きて30分〜1時間で消える起きると少し和らぐが続く
伴う症状吐き気、光・音が辛い激しいいびき、日中の眠気噴射状の嘔吐、手足の痺れ

💡 専門医のアドバイス:
「起きた直後が一番痛く、朝食を摂る頃には治っている」場合はSASの典型例です。一方、「今まで経験したことがない激痛」や「日に日に悪化する痛み」は脳腫瘍などの重篤な疾患を否定できないため、早急にMRI検査を受けてください。

 

寝起き頭痛を予防・緩和するセルフケア

危険な兆候がない場合、まずは生活習慣の見直しで改善するか試してみましょう。

睡眠環境(枕・光)を見直す

枕が高すぎると首の血管が圧迫されます。タオルなどで高さを調整し、首がS字カーブを保てる高さを探してください。また、遮光カーテンを活用し、良質な睡眠を確保しましょう。

就寝前・起床後の水分補給

寝ている間にはコップ1杯分の汗をかきます。脱水状態は片頭痛の引き金になるため、寝る前と起きた直後に常温の水を飲みましょう。また、夜間の低血糖予防のため、寝る前にピーナツバター(無糖)やナッツ類などを摂ってみてください。

規則正しい生活リズム

「寝溜め」は体内時計を狂わせ、片頭痛の誘因になります。休日も平日と同じ時間に起き、朝日を浴びることが大切です。

 

寝起きの頭痛に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 寝起きの頭痛は放っておいても大丈夫ですか?

A1. 寝起きの頭痛が一時的の場合は、片頭痛などが原因のことも多く、セルフケアで改善することがあります。しかし、毎日続く、徐々に悪化する、他の症状(吐き気・しびれなど)を伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性があるため、早めの受診をお勧めします。

Q2. 起きてしばらく活動すると頭痛が治まるのですが、放置しても平気ですか?

A2. 安心はできません。「起きて体を起こすと脳圧が下がって楽になる」というのは、脳腫瘍の方に見られる症状(早朝頭痛)の一つです。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合もあります。一度検査を受けましょう。

Q3. 頭痛と一緒に吐き気がするのが心配です。

A3. 片頭痛、または脳の病気の可能性があります。ズキズキする痛みと共に光や音をわずらわしく感じる場合は片頭痛の可能性が高いですが、突然の嘔吐や、日を追うごとに吐き気が強くなる場合は、脳腫瘍やくも膜下出血などの緊急性が高い病気も疑われます。早急に脳神経内科を受診してください。

Q4. 寝起き頭痛が睡眠時無呼吸症候群かどうかはどうやって分かりますか?

A4. いびきを家族に指摘されたり、日中の強い眠気、起床時の頭痛、夜間の中途覚醒がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。セルフチェックだけで判断せず、心配な場合は医療機関での検査を受けましょう。

Q5. お酒を飲んだ翌朝だけ頭が痛いのはなぜですか?

A5. アルコールによる脱水と血管拡張が原因です。寝る前に水を飲むことで予防できますが、少量のお酒でも痛む場合は高血圧などの可能性も考えられます。

Q6. 寝起き頭痛を予防するために、できることはありますか?

A6. 枕や寝具を見直す、就寝前のスマホや飲酒を控える、適度な運動やストレス解消を心がける、規則正しい睡眠時間を確保するなどが効果的です。寝る前にリラックスする時間を作ることもお勧めです。

Q7. 枕を変えても頭痛が治りません。なぜですか?

A7. 原因が枕ではない可能性が高いです。睡眠時無呼吸症候群や脳腫瘍などが隠れている可能性があります。寝具を買い替える前に専門医を受診するようお勧めします。

Q8. 子どもや若い人でも寝起き頭痛は起こりますか?

A8. はい、年齢に関係なく寝起き頭痛は起こります。特に成長期の子どもや若い人でも、睡眠不足、ストレス、寝具の問題などで頭痛が生じることがあります。長引く場合や他の症状を伴う場合は受診しましょう。

 

まとめ

  • ・寝起き頭痛は軽視せず、原因に応じて適切な対処・受診。
  • ・生活習慣の見直しやセルフケアの重要性。
  • ・心配な場合は早めに専門医へ相談。

 

参考文献

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