PMS頭痛について説明します。

PMS(premenstrual syndrome:月経前症候群)は、月経前に現れる身体的および精神的な不調です。中でも、頭痛は一般的な症状の一つで、その正体は片頭痛です。PMS頭痛は、特に生理前の黄体期に見られ、女性ホルモンの変動が大きく影響しています。1)2)
Q1. 片頭痛の特徴は?
A. 片頭痛は、脳血管の収縮と拡張によって生じ、以下のような特徴があります。
- ・女性に多い。
- ・片側の事も両側の事もある。
- ・目の奥、こめかみ、後頭部の痛み。
- ・脈打つ強い痛みが多い。
- ・吐き気や嘔吐を伴う場合がある。
- ・めまいを伴う事もある。
- ・光や音に敏感になる。
- ・気圧や気温の変化で悪化。
Q2. PMS頭痛の原因は?
A. 生理周期におけるエストロゲンの減少が、PMSによる片頭痛の主な原因とされています。また、エストロゲンが減ると脳内のセロトニンという物質が減少し、脳血管の拡張により片頭痛を生じます。

Q3. PMS頭痛の治療と対策は?
A. PMS頭痛を軽減するためには、いくつかのアプローチがあります。
①生活習慣の改善
規則正しい生活、そして、充分な睡眠を心がけましょう。また、片頭痛を悪化させる食事があります。具体的には、以下のような食材が関係します。3)
- ・チョコレート(チラミン)
- ・チーズ(チラミン)
- ・赤ワイン(アルコール、ヒスタミン、亜硝酸ナトリウム)
- ・着色したハム、ソーセージ、サラミ、明太子(亜硝酸ナトリウム)
- ・インスタント麺、中華料理の素(グルタミン酸ナトリウム)
- ・トウガラシ(カプサイシン)
- ・小麦(グルテン)
月経時には、こうした食事は避けた方が良いでしょう。
②ストレス管理
片頭痛はストレスで悪化します。そこで、瞑想や深呼吸、ヨガなどリラックスするための方法がお勧めです。精神的な緊張を減少させ、頭痛の発生頻度を下げる可能性があります。4)
③サプリメントの活用
マグネシウムやビタミンB2などのサプリメントを摂る事が推奨されます。これらは神経伝達物質のバランスを整え、片頭痛を予防する作用があります。また、月経の時期に生じる貧血が片頭痛を起こしやすくするため、鉄分を摂るようにしましょう。5)
④医療機関への相談
頭痛が重い場合や日常生活に支障が出る場合は、脳神経内科を受診してください。PMSの症状が強い場合、婦人科で低容量ピルが用いられる場合があります。しかし、逆に片頭痛が悪化する場合もあります。特に、閃輝暗点など前兆のある片頭痛では脳梗塞発症のリスクがあるため禁忌となっています。
横浜脳神経内科では、これまでの経験に基づいて治療を工夫しています。月経時には女性ホルモンの変動により脳血管の収縮と拡張が起こります。そこで、月経の時期に合わせて血管の拡張を予防する薬(Ca拮抗薬)を用いています。また、漢方薬を用いる場合もあります。
参考および引用文献
- 1) 日本産科婦人科学会|月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
- 2) 日本頭痛学会|月経時片頭痛の診断と治療
- 3) Xinhui Liu, Yuanyuan Yu, Lei Hou, Yifan Yu, Yutong Wu, Sijia Wu, Yina He, Yilei Ge, Yun Wei, Qingxin Luo, Fengtong Qian, Yue Feng, Hongkai Li, Fuzhong Xue. Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study. Front Nutr. 2023 Jun 7;10:1123657
- 4) Qi Wu, Ping Liu, Chunfeng Liao, Long Tan. Effectiveness of yoga therapy for migraine: A meta-analysis of randomized controlled studies. J Clin Neurosci. 2022 May:99:147-151
- 5) U.S. SARI, Ö. KAMA BAŞCI. Association between anemia severity and migraine in iron deficiency anemia. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2024 Feb;28(3):995-1001
(文責:理事長 丹羽 直樹)