更年期の頭痛はホルモンだけが原因ではない?脳神経内科医による「危険な頭痛」の見分け方と最新治療
「頭痛が続いて辛いけれど、更年期だから仕方がない」「市販の頭痛薬や漢方を飲んでいるけれど、吐き気やめまいが治らない」 40代・50代の女性の多くが、このような悩みを抱えています。
確かに閉経前後はホルモンバランスの乱れにより体調が変化しやすい時期ですが、「更年期障害」と自己判断して痛みを放置するのは危険です。 なぜなら、この年代はくも膜下出血や脳腫瘍などの脳疾患のリスクが高まる時期でもあるからです。 横浜脳神経内科は、2012年から2025年の間に16,175例の片頭痛、1,667例の緊張型頭痛の確定診断を行ってきた「脳と頭痛の専門クリニック」です。その実績に基づき、更年期の頭痛の本当の原因と、婦人科や市販薬では対応しきれない「脳神経内科ならではの治療法」について解説します。

なぜ更年期に頭痛が悪化するのか?メカニズムと特徴
更年期(閉経を挟んだ前後10年間、概ね45歳〜55歳)に頭痛が増えたり、これまでとは違う痛み方をしたりするのには、医学的な理由があります。
エストロゲンの急激な減少
女性ホルモン「エストロゲン」は、脳内のセロトニン(血管の収縮・拡張を調整する物質)の分泌に関与しています。更年期にエストロゲンが急減すると、脳血管が不安定になり、拡張した血管が神経を刺激して片頭痛を引き起こしやすくなります。
更年期頭痛の3つの特徴
更年期特有の頭痛の特徴は以下の通りです。
- ・片頭痛の悪化・変質: 若い頃からの片頭痛が頻繁になったり、痛みの質が「ズキズキ」から「重苦しい」に変わったりします。
- ・緊張型頭痛との混合: 加齢による首・肩の筋肉の衰えや、介護・仕事などの社会的ストレスが重なり、締め付けられるような頭痛(緊張型頭痛)を併発しやすくなります。
- ・随伴症状の増加: 頭痛だけでなく、強い吐き気、めまい、不眠を伴うケースが増えます。
その頭痛、本当に更年期?「危険な頭痛」のサイン
最も警戒すべきは、更年期症状の陰に隠れた「脳の病気」です。以下の症状が一つでも当てはまる場合は、「更年期のせい」と決めつけず、速やかに脳神経内科を受診してください。
⚠️ 危険な頭痛チェックリスト
- 今まで経験したことのない、バットで殴られたような激しい痛み(くも膜下出血の疑い)
- 手足のしびれ、麻痺、ろれつが回らない(脳卒中の前兆)
- 朝方や起床時に頭痛が強く、吐いてしまう(脳腫瘍による脳圧亢進の疑い)
- 発熱を伴う頭痛(髄膜炎などの疑い)
- めまい・ふらつきがひどく、真っ直ぐ歩けない(小脳や脳幹の異常の疑い)
- 頭痛薬を飲んでも全く効かない、または効きが悪くなった
これらの症状は、MRI検査などによる画像診断を行わなければ原因を特定できません。
婦人科とどう違う?脳神経内科を受診すべき理由
更年期の不調を感じた際、まずは婦人科を受診される方が多いと思います。婦人科では、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬による全身的なアプローチが得意です。 しかし、「頭痛そのもの」を専門的に診断・治療するのは脳神経内科の領域です。
| 比較項目 | 婦人科 | 脳神経内科 |
|---|---|---|
| 主なアプローチ | ホルモンバランスの調整 (HRT、漢方) | 脳疾患の除外診断 頭痛発作の抑制・予防 |
| 検査機器 | 血液検査、エコーなど | MRI、CTによる脳の画像診断 |
| 処方薬 | ホルモン剤、漢方薬 | トリプタン製剤、CGRP関連製剤 (頭痛専門の注射薬など) |
「婦人科で治療しているけれど頭痛だけは治らない」という患者さんが、当院のMRI検査で別の原因が見つかるケースも少なくありません。
横浜脳神経内科で行う「診断」と「最新治療」
当院では、問診だけでなく、客観的なデータに基づいた診断と治療を行います。
1. 高解像度MRIによる迅速な診断
まず最優先すべきは「命に関わる頭痛ではないこと」の確認です。当院では16,000件以上の片頭痛診断実績に加え、脳動脈瘤、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの早期発見にも力を入れています。
横浜脳神経内科では、考えられる疾患を想定したMRIの検査法を工夫しています。
2. CGRP関連製剤(片頭痛予防の注射薬)
更年期の片頭痛は頑固で、従来の飲み薬が効きにくいことがあります。当院では、近年登場した画期的な予防薬「CGRP関連製剤(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど)」を取り扱っています。 これは片頭痛の痛みの原因物質(CGRP)の働きを直接ブロックする注射薬です。
3. 薬物乱用頭痛からの脱却サポート
市販の鎮痛剤を飲みすぎて頭痛が悪化する「薬物乱用頭痛」に陥っている方も多く見られます。適切な予防薬への切り替えや、生活指導を通じて、薬に頼りすぎない生活を取り戻すサポートをします。
よくある質問(Q&A)
Q1. 更年期の頭痛はどれくらい続きますか?
A1. 個人差はありますが、更年期のホルモンバランスが安定する閉経後には、頭痛が軽くなる方が多いです。ただし、症状が長引く場合や悪化する場合は、他の病気の可能性もあるため医師の診断を受けましょう。
Q2. 市販薬や漢方薬を使っても大丈夫ですか?
A2. 軽い頭痛であれば市販薬や漢方薬を用法・用量を守って短期間使うのは問題ありません。ただし、長期間の連用や効かない場合は自己判断せず、医師に相談しましょう。薬剤の使い過ぎによる「薬剤誘発性頭痛」にも注意が必要です。
Q3. 更年期の頭痛に効果的な生活習慣は?
A3. 規則正しい生活リズム、充分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、ストレスを溜めない工夫が効果的です。自分に合ったリラックス法や趣味の時間を持つことも、頭痛の予防や緩和につながります。
Q4. 更年期の頭痛はどのタイミングで受診すべきですか?
A4. 今までにない激しい痛み、急な発症、手足のしびれや麻痺、視覚異常、意識障害、吐き気や嘔吐を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。また、市販薬やセルフケアで改善しない、頭痛が頻繁に起こる、日常生活に支障が出る場合も受診をお勧めします。
Q5. ホルモン補充療法(HRT)は頭痛に効きますか?
A5. ホルモン補充療法は更年期症状の緩和に有効な場合がありますが、片頭痛のある方は慎重に検討する必要があります。治療の適応やリスクについては必ず医師と相談してください。
Q6. どんなセルフケアが向いていますか?
A6. 片頭痛は静かな暗い場所で休み、痛む部分を冷やすのが有効です。緊張型頭痛には首や肩を温めたり、ストレッチやマッサージ、ツボ押し、ヨガなどの軽い運動が効果的です。自分の頭痛タイプに合わせたケアを心がけましょう。
まとめ:専門医と一緒に更年期頭痛と向き合おう
更年期の頭痛は正しい知識とセルフケアで軽減できますが、我慢しすぎず、困った時は専門医に相談しましょう。自分に合った方法で、前向きに更年期を乗り越えていきましょう。
参考
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設
