副鼻腔炎による頭痛とは?(結論・要点まとめ)
副鼻腔炎(蓄膿症)は、鼻の奥の副鼻腔に炎症や膿がたまることで頭痛を引き起こす病気です。 主なポイントは以下の通りです。
- ・鼻づまりや鼻水とともに頭痛が起こることが多い
- ・痛みの場所は炎症の部位によって異なる
- ・早期治療で症状の改善が期待できる

副鼻腔炎とは?(基礎知識・概要)
副鼻腔は、鼻の周囲にある空洞(前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞など)です。

副鼻腔炎は、これらの空洞に感染やアレルギーなどが原因で炎症が起きる病気です。
- ・原因:ウイルス・細菌感染、アレルギー、虫歯など
- ・急性:発症から4週間未満
- ・慢性:12週以上続く
副鼻腔炎による頭痛の特徴
痛みの部位や性質は以下のように異なります。
- ・前頭洞炎:額の痛み
- ・篩骨洞炎:目の奥や鼻の奥の痛み
- ・上顎洞炎:頬や奥歯の痛み
- ・蝶形骨洞炎:後頭部や頭の奥の痛み
その他の症状
- ・鼻水、鼻づまり
- ・嗅覚障害
- ・頭を下げると痛みが強くなる
症例報告
診断にはMRI検査が有効です。そこで、以下実際に当院を受診した症例の画像を提示します。
①前頭洞炎:43歳女性、左の額の痛みで受診。頭部MRI検査で左前頭洞に炎症性変化を認めました。

②篩骨洞炎:24歳男性、両側の目の奥の痛みで受診。頭部MRI検査で篩骨洞の炎症を認めました。

③上顎洞炎:33歳女性、元々左上の奥歯に虫歯があり、歯科で治療後も改善しないため受診。頭部MRI検査で左上顎洞に炎症を認めました。したがって、奥歯の感染がすぐ上の上顎洞へ波及した「歯性上顎洞炎」と考えられました。

④蝶形骨洞炎:元々片頭痛のある40歳女性、突然後頭部の激痛が出現し受診。頭部MRI検査で蝶形骨洞炎を認めました。

しかし、この所見だけでは症状の説明が付かず、頭部MRA検査(脳動脈の撮像)を加えました。

後大脳動脈(後頭部から上へ行く血管)に多くの狭窄を認め、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。この症例では、副鼻腔炎が誘因となり可逆性脳血管攣縮症候群を発症した可能性が考えられました。
診断方法
- 問診と診察で症状や経過を確認
- 画像検査(CT、MRI)が有効
- 耳鼻咽喉科や脳神経外科の受診も選択肢
治療法とセルフケア
- 薬物療法:抗生物質、鎮痛剤、抗アレルギー薬など
- 鼻洗浄・鼻うがい:専用洗浄液で膿や鼻水を排出
- 手術療法:内視鏡手術など(重症例)
- 日常生活での予防:うがいや室内環境の整備
早期受診の重要性と重症例への注意
副鼻腔炎による頭痛を放置すると、慢性化や重篤な合併症のリスクがあります。症状が続く場合や強い痛みがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
参考および引用文献
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設