副鼻腔炎と頭痛について説明します。

副鼻腔炎(蓄膿症)は、鼻の奥にある副鼻腔に感染が生じ、膿がたまる病気です。そして、この状態はしばしば頭痛を引き起こします。
Q1. 副鼻腔炎とは?
A. 鼻腔(鼻の穴)の周囲には、前頭洞、篩骨洞、上顎洞などの空洞があります。また、この図では書かれていませんが、目の奥の位置に蝶形骨洞という部分もあります。これらの空洞に細菌が入り込んで感染を起こした状態が副鼻腔炎です。

風邪やアレルギ—性鼻炎がきっかけとなる事が多いです。また、虫歯が原因となる事があります。
Q2. 副鼻腔炎による頭痛の症状は?
A. 副鼻腔炎による痛みの場所は、主に感染を起こしている副鼻腔によって変わります。
- ①前頭洞:前頭部の痛み
- ②篩骨洞:前頭部、目や鼻の奥の痛み
- ③上顎洞:頬や上顎の痛み
- ④蝶形骨洞:目の奥、後頭部の痛み
感染を起こしている場所が拡がっている場合、頭全体の痛みも起こります。強い痛みの事もあれば、鈍痛の事もあります。押したり、叩くと痛みを感じる場合があります。
また、頭を下に下げると副鼻腔内の圧が変化し、痛みが強くなる特徴があります。
頭痛以外に、鼻水や鼻づまり、臭いがわかりにくいなどの症状を伴う事もあります。
Q3. 副鼻腔炎による頭痛のメカニズムは?
A. 副鼻腔内には、三叉神経という痛みを脳へ伝達する神経が分布しています。

副鼻腔内に感染が起こると、炎症や圧の上昇が三叉神経を刺激して、局所の痛みを生じます。
Q4. 副鼻腔炎による頭痛の診断は?
A. 副鼻腔炎の診断には、MRI検査が有効です。そこで、以下実際に当院を受診した症例の画像を提示します。
①前頭洞炎:43歳女性、左の額の痛みで受診。頭部MRI検査で左前頭洞に炎症性変化を認めました。

②篩骨洞炎:24歳男性、両側の目の奥の痛みで受診。頭部MRI検査で篩骨洞の炎症を認めました。

③上顎洞炎:33歳女性、元々左上の奥歯に虫歯があり、歯科で治療後も改善しないため受診。頭部MRI検査で左上顎洞に炎症を認めました。したがって、奥歯の感染がすぐ上の上顎洞へ波及した「歯性上顎洞炎」と考えられました。

④蝶形骨洞炎:元々片頭痛のある40歳女性、突然後頭部の激痛が出現し受診。頭部MRI検査で蝶形骨洞炎を認めました。

しかし、この所見だけでは症状の説明が付かず、頭部MRA検査(脳動脈の撮像)を加えました。

後大脳動脈(後頭部から上へ行く血管)に多くの狭窄を認め、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。この症例では、副鼻腔炎が誘因となり可逆性脳血管攣縮症候群を発症した可能性が考えられました。
Q5. 副鼻腔炎による頭痛の治療は?
重症度により、以下の治療法が用いられます。
薬物療法
抗生物質や膿を排出しやすくする薬、また、必要により鎮痛剤などが用いられます。
鼻洗浄
専用の洗浄液を用いて、貯まった膿を排出しやすくします。また、薬物療法と併用する事で治りを早くします。
手術療法
薬で治りにくい場合には、内視鏡手術により膿を排出します。
また、重症の場合には、感染が頭蓋骨の内部にまで及んで生命の危険がある場合もあります。したがって、早めに医療機関を受診するようお勧めします。
参考および引用文献
(文責:理事長 丹羽 直樹)