低血圧で頭痛に悩む方へ|原因・対策・受診目安を専門医が解説
低血圧で「頭痛がつらい」「朝が起きられない」と悩んでいませんか?この記事では、低血圧による頭痛の仕組みやセルフケア、受診のタイミングまで、専門医の視点で詳しく解説します。
低血圧とは?頭痛との関係
低血圧は、一般的に収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下とされます。体質的なものから病気によるものまで原因は様々ですが、血圧が低い事で脳への血流が不足し、頭痛などの症状が現れる事があります。
低血圧による主な症状
- ・立ちくらみ・めまい
- ・朝起きられない・やる気が出ない
- ・倦怠感・疲れやすさ
- ・頭痛・頭重感
特に「頭痛」は、他の症状とは異なるメカニズムで起きる場合があり、注意が必要です。
低血圧による頭痛の特徴と症例
低血圧による頭痛は、朝や立ち上がった時、長時間の立ち仕事などで現れやすく、横になると楽になるのが特徴です。実際の症例を紹介します。
低血圧で頭痛を生じた症例
30代前半の女性で、元々頭痛持ちだった方です。
しばしば立ちくらみがあり、階段を昇っていると歩けなくなるという状況でした。健康診断で低血圧を指摘され、このための立ちくらみと言われていました。また、仕事が忙しく、普段からあまり水分が摂れていませんでした。
ある時期から、後頭部を中心とした痛みを感じるようになり、時々前頭部の痛みも生じるようになりました。横になると頭痛は軽くなり、立ち仕事では頭痛で支障をきたしていました。
横浜脳神経内科を受診、診察場面でも立った姿勢で頭痛を生じ、横になると楽になる状態でした。頭を下に下げても頭痛は軽くなり、両側の頚静脈を圧迫するとやはり頭痛は軽くなりました。
頭部MRI検査を行いました。
すると、脳の周囲を囲む白い部分が写っています。頭蓋骨と脳の間に硬膜という硬い膜がありますが、通常は薄いため写りません。つまり、硬膜が厚くなっており、硬膜肥厚という状態になっています。
脳脊髄液減少症という髄液が減って頭痛を起こす状態があります。硬膜は脳から脊髄までを包んでおり、通常は脊髄周囲の硬膜に穴があいて髄液が漏れるために生じます。硬膜肥厚は、内側から硬膜が引っ張られる事で生じます。
この方の場合には、調べた限り硬膜の穴は見つかりませんでした。したがって、慢性的な低血圧と脱水のために髄液が作れなくなって生じたものと考えられました。
この症例ほど極端な例は少ないかもしれません。しかし、低血圧により脳脊髄液減少症をきたす場合もあると思われます。
このように、低血圧による頭痛は「脳脊髄液減少症」など特殊なケースもあり、単なる血流不足だけが原因ではない場合があります。
なぜ低血圧で頭痛が起きるのか?メカニズムを解説
- ・脳への血流低下による酸素・栄養不足
- ・脱水や血液量の減少による髄液減少
- ・自律神経の乱れによる血管調節機能の低下
特に脱水や生活習慣の乱れが重なると、頭痛が起きやすくなります。
低血圧による頭痛のセルフケア・日常対策
- ・積極的な水分・塩分摂取(むくみがなければ1日1.5~2Lを目安に)
- ・朝食は少なめにし、炭水化物を控える
- ・弾性ストッキングで下半身をサポート
- ・コーヒーや紅茶などカフェイン飲料の活用
- ・規則正しい生活リズムと充分な睡眠
- ・軽い運動やストレッチ
日常生活の見直しで症状が軽減する場合も多いですが、無理は禁物です。
こんな時は医療機関へ|受診の目安
- ・頭痛やめまいが頻繁・強く、日常生活に支障がある
- ・横になっても頭痛が続く
- ・吐き気・嘔吐、意識消失を伴う
- ・急激な血圧低下や、他の病気が疑われる場合
必要に応じて昇圧剤や髄液量を増やす薬、専門的な検査・治療が行われます。自己判断せず、医師に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 低血圧による頭痛はどんな特徴がありますか?
A1. 低血圧による頭痛は、立ち上がった時や長時間立っている時に起こりやすく、横になると楽になる傾向があります。また、後頭部や頭全体が重く感じる事も多いです。
Q2. 低血圧の頭痛と片頭痛はどう違いますか?
A2. 低血圧の頭痛は横になると軽減しやすく、脱水や立ちくらみを伴う事が多いのが特徴です。片頭痛は「ズキズキした痛み」「光や音に敏感」などの特徴があります。
Q3. どんな人が低血圧による頭痛になりやすいですか?
A3. 若い女性や、体質的に低血圧の方、脱水気味の方、生活リズムが乱れがちな方に多い傾向があります。
Q4. 低血圧による頭痛はどのように対策すればいいですか?
A4. まずは充分な水分と塩分を摂る事が大切です。規則正しい生活や適度な運動、朝食を抜かない事も効果的です。症状が強い場合は医療機関への相談をお勧めします。
Q5. 頭痛以外にどんな症状が出る事がありますか?
A5. 立ちくらみ、めまい、倦怠感、朝起きられない、食欲不振、動悸、息切れ、手足の冷えなど、様々な症状が現れる事があります。
Q6. どんな時に病院を受診した方がいいですか?
A6. 頭痛やめまいが頻繁に起こる、日常生活に支障がある、吐き気や意識障害を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
Q7. 低血圧の頭痛は治りますか?
A7. 生活習慣の見直しやセルフケアで改善するケースが多いですが、症状が続く場合や重い場合は専門的な治療が必要になる事もあります。自己判断せず、医師に相談しましょう。
まとめ
低血圧による頭痛は、生活習慣の工夫やセルフケアで改善できる場合が多いですが、つらい症状が続く場合は医療機関への相談が大切です。自分の体調に合った対策で、快適な毎日を目指しましょう。
参考文献
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設


