1.市販薬の限界

頭痛で悩んでいる方は、まずは市販薬を飲むという場合が多く、薬局で薬を購入する事が一般的でしょう。
病院やクリニックで処方される薬と違い、自分の都合に合わせて薬を手に入れる事ができます。待合室や薬局で長く待つ必要もありません。
しかし、そこに大きな問題点があります。

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薬はサプリメントや栄養食品とは違って、必ず副作用があります。
人間の身体は一人ひとり異なるので、同じ薬が誰にでも同じように効くわけではありません。薬局で一般的な薬の効能や副作用は教えてくれるかもしれませんが、今のあなたの頭痛がどんな原因で起きているのか、副作用が起きた時にどうすればいいのかは教えてくれません。
ましてや、通販で買った薬に関しては、自己責任が前提なので売った業者は責任を取りません。

  1. ①薬の副作用が気になる
  2. ②いろいろな薬を飲んでみたが効く薬がない
  3. ③薬は効いているが飲む回数が増えてきて心配
  4. ④薬を飲む事自体の不安
  5. ⑤今まで効いていた薬が効かなくなった

などの不安がありませんか?

重大な副作用が発生した時、薬局や通販ショップではそれを診断する事も治療する事もできません。

頭痛持ちの方の多くは片頭痛など命に関わる事のない頭痛ですが、検査をしてみたら重大な脳の病気だったという事は少なくありません。日常的に医療の場にたずさわっていると、我々医師も予期せぬ病態に遭遇してハッとさせられる経験があります。
痛みというのは、身体のどこかに何かが起きているというサインです。
その気軽さのために、ついつい市販の鎮痛剤で痛みを止めてしまう事は危険です。

脳や身体のどこかに何らかの病気があって起きる頭痛を二次性頭痛といいます。脳腫瘍や脳血管疾患の場合、また脳以外の病気で起きる頭痛もあります。
頭痛外来の最も重要な役割は、まずは危険な二次性頭痛を見分ける努力をし、次に痛みを解決できる方法を見つけて安心していただく事だと考えます。

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2.ずっと頭痛に悩んでいる方

長く頭痛に悩んでいる方、特に市販薬では効かないような場合、脳神経外科や脳神経内科を受診する事があるかと思います。
一つの頭痛に対して、決してパターン化した治療では解決しません。
たとえば、片頭痛の特効薬と言われているトリプタンがいつも効くとは限りません。
薬が効かない原因は何か?そもそも診断が合っているのか?
という根本的な問題を解決する必要があります。

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よくある頭痛の解説として、以下のような分類がされています。


慢性頭痛の種類は主に以下の3つ

①緊張型頭痛

いちばん多い頭痛。締め付けられるよう鈍い痛みで、肩こりやストレスが原因。姿勢の悪さや長時間のパソコンの使用がさらに悪化させているので、肩を温めてマッサージをするのが効果的。

②片頭痛

頭の片側がズキンズキンと脈に合わせて痛くなり、市販の痛み止めが効かない場合でもトリプタンという特効薬がある。

③群発頭痛

片側の目の奥が激しく痛み、涙や鼻水が出てくるのが特徴。片頭痛と同じトリプタンという薬が効く。


しかし、このどれかのパターンに当てはめて、決まった薬を処方するだけでは、正しい診断や適切な治療につながるとは限りません。
先人の研究から得られた根拠に基づいた医療(evidence based medicine)と、実践から得られた診断や治療の考え方(thinking process)とが大事ではないでしょうか?
症状がいつからどのように始まって、どんな経過をたどってきているかが、まず最初の重要な手がかりになります。問診(患者さんから必要な情報を聞く事)だけで診断がつく場合もありますが、必要によって身体をいろいろと動かしてもらったり、そこから推測される原因に合わせて検査を行います。

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3.いつもと違う頭痛の方

元々頭痛持ちだった方でも、「この頭痛、いつもと何だか違う…」と感じた時、たいていの場合すぐに病院を受診しようと決心すると思います。

  • 頭痛の他に吐き気やめまいもする
  • 一晩寝れば治っていた頭痛なのに毎日痛い
  • いつもと違って後頭部が急に痛くなった
  • 今まで効いていた薬が効かなくなった
  • この頭痛の原因はいったい何だろう?

そんな不安に襲われた患者さんが安心できるために必要な事は、正確な診断と治療、そして今後の見通しを伝える事だと考えます。

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危ない頭痛ばかりではありません。インターネットの情報では、くも膜下出血や脳腫瘍など、どこの病院でも判断できるような危険な病気ばかりが取り上げられて、不安をあおられる事でしょう。

普通に経験を積んだ脳神経内科や脳神経外科の医師がCTやMRIの検査をすれば、そうした病気は分かります。しかし、原因が分かった場合にどんな治療ができるのか、逆に危険な頭痛でない事はわかったものの、今後どうしたら良いのかを適確に説明してもらいたいというのが、多くの患者さんの希望ではないでしょうか?

当院では、危険な頭痛を見分けるためにMRI検査を行います。大事な事は、その診断結果に基づいて安心できる説明をする事だと考えます。

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4.命に関わる頭痛

命に関わる危険な頭痛があります。

  1. 今までに経験した事のない頭痛
  2. ○月○日の何時頃と言えるほど突然起きた頭痛
  3. 頭痛以外の症状(手足の力が入らない、言葉が出にくいなど)がある

こうした症状が出現した場合、直ちに検査が必要です。

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最も危険度が高く、緊急に治療が必要な病気はくも膜下出血です。

くも膜下出血のしくみ

頭の骨の裏側にくも膜という薄い膜があります。(見た目がくもの巣のように見えるのでこう言います)そのくも膜の下、つまり骨と脳のすき間に出血した状態がくも膜下出血です。
これがどうして危ないのか?
この狭いすき間に動脈という流れの強い血管から一気に血液が吹き出るので、脳圧(頭蓋骨内部の圧力)が急激に高くなって、呼吸や心臓のコントロールをしている脳幹部分が圧迫されて働きが止まってしまうからです。突然死もあり得ます。

血管の一部に「動脈瘤」というコブができていた場合、そこだけ血管の壁が薄いので、血圧がかかって次第に膨らんで大きくなります。
すると、さらに壁が薄くなってくるので、限界が来た時に破裂して出血します。くも膜下出血の原因の多くは、この動脈瘤です。

脳動脈瘤破裂

動脈瘤がまだ破裂していない状態では、頭痛はない事がほとんどなので気が付きません。ところが、実は前触れの頭痛が起きる場合があるのです。

実際の経験症例

後頭部の急な頭痛

「命に関わる危ない頭痛」はくも膜下出血以外にもいくつかありますが、死亡率が約50%と最も危険度が高く1) 2) 、医師の見落としが命取りになるという点から、この病気を取り上げました。

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5.頭痛の原因を知りたい

頭痛の原因を明らかにする事が、適切な治療に繋がります。

CT検査やMRI検査は、脳や脳血管の病気がないかどうかを調べるためにきわめて重要な検査です。

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CT(Computed Tomography)は、脳の周囲から放射線を照射し、コンピューターで脳の断面画像を描いたものです。

MRI(Magnetic Resonance Image)は、高磁場を当てて体内の水素原子に共鳴現象を起こさせ、反応する信号をコンピューターで捉えて画像化したもので、CT以上に精細な画像が得られます。

MRI装置では、体内で動いている水(血液)から返ってくる信号を合成して、MRA(Magnetic Resonance Angiography)という脳の血管画像を描く事ができます。

CTのメリットは、短時間で撮影できる事と血液成分を敏感に描き出せる事で、取り急ぎくも膜下出血がないかを確認するのに役立ちます。
このため、救急現場ではまずCT検査を行う事が多くなっています。
MRIはCTより多くの情報が得られるメリットがありますが、時間がかかるので、従来は後回しにされる事が多かった時期があります。
しかし近年普及してきた3.0テスラの高磁場MRIであれば、CTとさほど変わらない所要時間で検査が可能で、くも膜下出血を描き出す事も充分可能となっています。さらにMRA検査により、くも膜下出血の原因である脳動脈瘤自体を確認する事も可能です。
必要な情報を得るための検査時間がCTで5-10分、3.0テスラMRIなら10-15分で終了します。

一方、CTやMRIを撮っても原因がわからない頭痛もあります。

CT検査やMRI検査で何も異常がなかった場合、頭痛の原因がないわけではありません。こうした画像検査では分からない頭痛もあります。また、せっかく検査をしても、検査方法やその解釈の仕方が適切でなければ、原因が見落とされてしまう場合もあります。

多くの頭痛に悩む方にとっては、「この今の痛みを何とかしたい」という思いと同時に、「この頭痛の原因が何かを知りたい」という不安があるのではないでしょうか?

当院では、ただ薬を処方するだけではなく、頭痛の起きている原因や悪化させる要因を明らかにして、患者さんの不安が解消できるよう、納得のできる説明をする事が大事だと考えています。

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(参考)

1) くも膜下出血|慶応義塾大学病院 KOMPAS

2) くも膜下出血はどう診断するか – 日本頭痛学会

(文責:理事長 丹羽 直樹

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