低血圧で頭痛が起きる原因
低血圧で頭痛が起きる事はまれですが、悩んでいる方にとっては生活に支障をきたす深刻な状況かと思います。この記事では、低血圧により頭痛をきたす仕組みを解説します。
低血圧による一般的な症状
- 1. 立ちくらみやめまい
- 2. やる気が起きない
- 3. 倦怠感
- 4. 頭痛や頭重感
などが低血圧による主な症状とされています。1から3までは、脳への血流が不充分なために必要な酸素やブドウ糖が不足する事で脳の働きが鈍るためとされています。しかし、4の頭痛や頭重感については、脳血流低下だけでは説明が付きません。そこで、以下に示した症例報告がご理解の助けになるかと思われます。
低血圧で頭痛を生じた症例
30代前半の女性で、元々頭痛持ちだった方です。
しばしば立ちくらみがあり、階段を昇っていると歩けなくなるという状況でした。健康診断で低血圧を指摘され、このための立ちくらみと言われていました。また、仕事が忙しく、普段からあまり水分が摂れていませんでした。
ある時期から、後頭部を中心とした痛みを感じるようになり、時々前頭部の痛みも生じるようになりました。横になると頭痛は軽くなり、立ち仕事では頭痛で支障をきたしていました。
横浜脳神経内科を受診、診察場面でも立った姿勢で頭痛を生じ、横になると楽になる状態でした。頭を下に下げても頭痛は軽くなり、両側の頚静脈を圧迫するとやはり頭痛は軽くなりました。
頭部MRI検査を行いました。
すると、脳の周囲を囲む白い部分が写っています。頭蓋骨と脳の間に硬膜という硬い膜がありますが、通常は薄いため写りません。つまり、硬膜が厚くなっており、硬膜肥厚という状態になっています。
脳脊髄液減少症という髄液が減って頭痛を起こす状態があります。硬膜は脳から脊髄までを包んでおり、通常は脊髄周囲の硬膜に穴があいて髄液が漏れるために生じます。硬膜肥厚は、内側から硬膜が引っ張られる事で生じます。
この方の場合には、調べた限り硬膜の穴は見つかりませんでした。したがって、慢性的な低血圧と脱水のために髄液が作れなくなって生じたものと考えられました。
この症例ほど極端な例は少ないかもしれません。しかし、低血圧により脳脊髄液減少症をきたす場合もあると思われます。
低血圧で頭痛を生じる場合の対策と治療
慢性的な低血圧と脱水状態が原因であり、以下のような習慣を心掛ける事が大事です。
- ・積極的に水分と塩分を摂る。
- ・弾性ストッキングなどで下半身を圧迫する。
- ・朝食は少なめとし、炭水化物を控える。
- ・コーヒーを飲む習慣。
いずれも、血管内の水分を増やす事で、髄液の材料を増やす効果があります。また、内科的治療としては、昇圧剤と髄液量を増やす薬(ビタミンA、カフェイン)による治療が主となります。
参考文献
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この記事は横浜脳神経内科医師が書いています。
資格
- 日本神経学会神経内科専門医・指導医
- 日本頭痛学会専門医・指導医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本内科学会認定内科医
- 身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由、平衡機能障害、音声機能・言語機能障害、そしゃく機能障害、膀胱直腸機能障害)
略歴
- 1988年3月 千葉大学医学部卒業
- 1989年10月 松戸市立病院 救急部
- 1994年10月 七沢リハビリテーション病院
- 2002年4月 沼津市立病院 神経内科
- 2002年11月 長池脳神経内科開設
- 2012年11月 横浜脳神経内科開設


